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講義No.07121

外来の文学・文化を巧みに取り入れた、『源氏物語』の国際性

『源氏物語』は完全に日本のオリジナル?

 今から千年以上も前、平安時代中期に紫式部によって書かれた長編『源氏物語』。当時については、日本独特の国風文化の潮流があったとされ、この作品もその象徴的な存在とみられることが多いようです。しかし実際は、完全に日本で生まれたオリジナルの要素だけで成り立っているのではなく、外来の文学と文化をかなり積極的に取り込んで利用しているのです。

国際的といいうる状況の中で生まれた新しい文化

 例えば、『源氏物語』の「桐壺」巻には、まだ幼い主人公の光源氏が、高麗人(こまうど)の相人(そうにん:人相で占いをする人)のもとに素性を隠したまま連れていかれ、並々ならぬ相の持ち主であることを見抜かれるというくだりがあります。この高麗人の相人は、鴻臚館(こうろかん)という外交使節が接待を受ける館に滞在しており、7世紀末から10世紀初頭に中国東北部・朝鮮北部・ロシア沿海地方にかけて栄えていた渤海(ぼっかい)という国の外交官であると解されます。そのほかにも『源氏物語』では、かなりの頻度で漢詩文、とりわけ『白氏文集』を引用したり、多数の舶来品を描いたりしています。平安時代、遣唐使の廃止以降も、国際的といいうる状況のもとで新しい文化が育まれていったことがうかがえます。

千年の時を超え、世界中で読まれる『源氏物語』

 『源氏物語』は、1933年に完成するアーサー・ウェイリーの英訳を契機に、海外でも広く読まれるようになり、これまで多数の言語に翻訳されています。もちろん、中国や韓国でもそれぞれ数種類の翻訳があり、広く読まれています。かつて、外来の文学・文化を巧みに取り入れながら書かれた『源氏物語』が、千年もの時を超え、今は世界中の人々の手に渡って読み継がれているのです。また、『源氏物語』の翻案作品、絵画化・漫画化・映画化された『源氏物語』なども数え切れないほどあります。光源氏をはじめとする登場人物たちだけでなく、この作品自体もまた、ドラマチックな運命を背負っていると言えるでしょう。


この学問が向いているかも 日本文学

早稲田大学
文化構想学部 文化構想学科 複合文化論系 教授
陣野 英則 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 しばらく前から、日本の大学生の多くは、自分たちのことを「学生」ではなく「生徒」と呼ぶようになってきました。例えばアメリカ英語ではどちらもstudentというようですが、日本語の「学生」と「生徒」はかなり違います。大人たちの側から導かれ、ケアを受けることによってその人の道がひらかれることもあるでしょう。それで満足するのならば「生徒」でいいかもしれませんが、やはり私は、人に言われた通りに動くだけではなく、自ら主体的に考えて行動する「学生」になってほしいと思います。

先生の学問へのきっかけ

 高校から大学のころの私は、日本の古典文学に対して、何か「閉じた」印象を抱いていました。現代にそぐわない身分社会の話であったり、男尊女卑があったりして、おまけに読みづらい……とネガティブなイメージばかりでした。しかし、大学を卒業し、出版社で働きはじめてから数年後、日本の古典文学には、例えば欧米の文学・文化にはない「開かれた」面があるように思えてきました。特に、今から一千年も前の女性たちが見事な文学を生成し得たのはなぜなのだろうかと興味を持つようになり、大学院での研究をめざすようになりました。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

中学校・高等学校国語科教員/図書館司書/大学職員/大学教員/出版社編集/食品会社企画/旅行会社営業

大学アイコン
陣野 英則 先生がいらっしゃる
早稲田大学に関心を持ったら

 新しい時代に一歩を踏み出す力は、「今」だけの想いで生まれるものではなく、「今まで」の積み重ねが「これから」を創造する力となって動き出します。125年を超える歴史を刻み、“私学の雄”として確かな伝統を受け継いできた早稲田大学は、時代を創り、動かし、育んだ“知”を社会に活かすことで、力強く前進を続けてきました。そして今、世界基準を視野に入れたグローバルユニバーシティ“WASEDA”として歩み始めています。WASEDAの未来、世界の未来を担い、新しい歴史をつくるのはこれから入学してくるあなたたちです。

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