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講義No.06909

私たちは遠くの世界をどう認識しているのか ~距離感の心理学~

月までの距離を感じ取れますか?

 人間は、遠くに見えるものとの距離を、どのように認識しているのでしょうか? 例えば、月までの距離を本やインターネットを使わずに、自分の感覚だけで正しく答えられる人はいないはずです。夜空に浮かぶ月を、「遠くにある」と感じられても、それは物理的な距離を理解しているわけではありません。距離感を感じる仕組みは、どのようなものなのでしょうか。

距離感の手がかりになる3つの情報

 人間は、外界の情報の多くを視覚から得ています。しかし、網膜から入力される情報は2次元で、距離に関する直接的なものは含まれていません。2次元の情報から3次元の画像を作るために、脳が距離に関する手がかりをうまく取り出しているのです。
 距離感の手がかりになる情報には、「絵画的奥行き手がかり」「両眼網膜像差」「運動視差」があります。絵画的奥行き手がかりとは、絵を描く技法に使われる、物の大小や陰影などのことです。両眼網膜像差は、右目と左目の異なる位置から物を見ることで生じる「像のズレ」のことで3D映像を作るときにも応用されています。運動視差とは、手前の物は大きく動き、遠くの物はあまり動かないように見えるという、動き方の違いを指します。

夜空の月は2次元の絵と同じ?

 これまでの研究で、両眼網膜像差で識別できる距離は数百m程度だということがわかっています。それより遠くにある物は、絵画的奥行き手がかりで距離を判断するため、動きの情報を除けば2次元の絵を見るのと本質的な違いはありません。それなのに、脳内では奥行きをともなう画像として認識されるのは、不思議なことです。
 距離感を感じるメカニズムの研究は、トリックアートやだまし絵といった芸術や、視覚に関わる脳機能を損傷した人への治療法の研究など医学分野とも深い関わりがあります。心理学というと、他者の心について調べる科学と考えられがちですが、「私たちは世界をどう認識しているのか」を調べる学際的な科学でもあるのです。


この学問が向いているかも 知覚心理学、認知心理学

九州大学
文学部 人文学科 人間科学コース 准教授
光藤 宏行 先生

メッセージ

 文学部は、「文学」を研究する所だと思っている人も多いかもしれません。しかしそれは、文学部の一部でしかありません。なぜなら、文学部全体の目的は、「行動や心を含め、人間を理解すること」だからです。その中で、科学的な方法を駆使して探究するのが、心理学という学問です。
 私は、「知覚心理学」が専門で、「奥行きを感じる視覚の仕組み」を研究しています。これは、だまし絵やトリックアートとも関係する分野です。「見ること」「考えること」「心の仕組み」を私たちと一緒に研究しましょう。

先生の学問へのきっかけ

 高校時代、将来はデザイナーになりたいと考え、大学はものづくりを目的とする工学部に入学し、工業デザインの勉強を始めました。
 大学1、2年生の一般教養や専門科目の講義で、人間工学や心理学など、人間を直接の研究対象とする分野があることを初めて知り、人間に関わる科学的・実験的な研究は、自分自身が体験してデータをつくり出せることがとても楽しく、やってみたいと思うようになりました。その後、デザイナーとしての自分の適性を評価し、デザイナーよりも研究者の方が魅力的に思え、心理学を研究できる大学院に編入しました。

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光藤 宏行 先生がいらっしゃる
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 九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。

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