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講義No.06434

経営効率だけでは説明できない東南アジアの農業

農業経営学だけでは、全体像はわからない

 農業経営学とは、農業経営の発展を阻む原因を考えたり、十分な利益を得るための方法を考えたりする学問です。先進国の農業は、このような農業経営学の対象となります。ところが、東南アジアのような発展途上国では、農業経営学だけでは全体像をとらえることができません。というのも、利益を求めない自給自足的な農家が多く、「経営」というレベルに達していない場合が多いからです。そこで、このような発展途上国特有の問題は、地域社会や国の政策、あるいは経営環境の問題として考えることが必要です。

雨期、乾期があるカンボジアの場合

 カンボジアは、雨期と乾期がはっきりとしています。農業は雨頼みであるにもかかわらず、灌漑(かんがい)率が低いため、雨が降らない時期が続くと作物は枯れてしまいます。一方で、雨期には洪水の危険性があります。そのため、水を有効に使うために、いつ種まきしていつ収穫するかという、気象サイクルに合わせた耕作パターンが約10種類あります。また、主食である稲作では大量の水が必要となるため、農家同士が協力して水を融通するために、国は協同組合を作らせることで、公平な水配分を行わせようとしています。

社会的な要因が農業発展を阻害する

 しかし、カンボジアはポルポトの圧政で、お互いに協力するという経験が乏しく、また水路も無計画に作られたため生産基盤が損なわれています。水の使い方を巡っては、話し合いを行いますが、農業用水の上流と下流では水の行き渡り方に差があるため、調整がうまくいかず対立の原因になっています。共同施設を使用しているのに、恩恵を受けていないという理由で組合に非協力的な農家もあります。
 もちろん、東南アジアのすべての農業がこのような状況というわけではありません。マレーシアのような先進地域では、効率的な農業を行っています。東南アジアでも、それぞれの国に応じた農業形態があり、問題を抱えています。ですから地域ごとの、きめ細かい調査・研究が必要になるのです。


東南アジアの農業と農村の暮らし

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鳥取大学
農学部 生命環境農学科 国際乾燥地農学コース 教授
安延 久美 先生

メッセージ

 国際農業開発学を研究している私の研究室では、東南アジア諸国の農村調査を行っています。学生と一緒にアジアの農村に調査にも出かけます。
 タイ東北部やカンボジアやラオスでは農地に水を供給するために整備された灌漑設備が乏しく、雨に頼った農業を行っているために、干ばつ被害のリスクを抱えています。イネの収量も低く、農家は貧しい状態です。こうした地域の農業生産を阻害する要因は何なのか、新しい農業生産技術を普及するためにはどうしたらよいのか、生産力が高くなったときの農村社会への影響などの研究を行っています。

先生の学問へのきっかけ

 高校生の頃は、公害など高度成長後のひずみが叫ばれている時代で、環境や生態系のことを勉強したいと思っていました。しかし、よくよく考えてみると、そうした問題は、元はと言えば人間の行為から発生していることに気づき、経済や社会のことに関心が移っていきました。
 大学では農業経営学を専攻しました。しかし、農業経営学だけではカバーしきれない、昔ながらの家族経営や、自給自足的な開発途上国の農業問題や社会について研究をしたいと考えるようになりました。

大学アイコン
安延 久美 先生がいらっしゃる
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 鳥取大学は、教育研究の理念に「知と実践の融合」を掲げ、高等教育の中核としての大学の役割である、人格形成、能力開発、知識の伝授、知的生産活動、文明・文化の継承と発展等に関する学問を教育・研究し、知識のみに偏重することなく、実践できる能力をつけるように努力しています。また、研究・教育拠点、幅広い専門的職業人の養成、地域の生涯学習機会の拠点、社会貢献機能など個性輝く大学を目ざし、地方大学にこそ求められるオンリーワンの研究開発を行い、社会に貢献し、国際的競争力を確保できる大学運営を目ざしています。

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