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講義No.06148

細胞を生きたまま長時間保存する技術で医療が変わる

凍ると細胞は壊れてしまう

 凍結保存した血液は、一度解凍すると3時間しか持ちません。前もって解凍しておけないため、緊急を要する手術では不足してしまう恐れがあります。また再生医療に使うES細胞やiPS細胞は、凍結保存するとその多くが死んでしまうという問題があります。細胞を保存するには低温にして代謝を下げればよいのですが、細胞は完全に凍ると氷の結晶によって壊れてしまうのです。臓器移植の現場でも、細胞が凍らないように保存液に浸しています。この保存液には、少なからず毒性があることも懸念されています。細胞を壊さず安全に「生きたまま」長時間保存する技術が求められているのです。

「磁場」の力で細胞を生きたまま保存

 そこで考案されたのが「核磁気共鳴反応を使った過冷却による細胞保存法」です。「過冷却」とは、水が0℃以下でも凍らないなど、本来なら凍ってしまう状態でも物質が変化しない現象で、これなら細胞を生きたまま長時間保存できます。過冷却を起こすために用いる核磁気共鳴反応は、医療機器のMRIに似た原理で、細胞に含まれる水(H2O)の水素原子核に2つの異なる磁場を与えて、その原子核の持つ回転(磁気スピン)の向きや速さを制御するものです。この反応を使うと、過冷却の状態が安定してつくり出せます。

SFの世界が現実になるかも

 マウスの細胞を使った実験で、凍結させた細胞の1時間後の生存率が20%だったのに対し、核磁気共鳴反応を使った過冷却では細胞の95.9%が生存していました。理論上マイナス20℃くらいに細胞を保つことができると、100%の生存率に近づくと考えられ、装置の改良が続いています。
 この技術が実現すれば、輸血や再生医療、臓器移植の現場が大きく変わることでしょう。医療だけでなく、食品の鮮度を保ったまま輸送する技術にも応用できます。もしかしたら、SF小説に登場するような仮死状態を保つコールドスリープが現実になる日も来るかもしれません。

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この学問が向いているかも 医用工学

静岡大学
工学部 化学バイオ工学科 教授
木村 元彦 先生

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メッセージ

 私の専門は、「医用工学」です。医用工学は高校で学ぶ物理、化学、生物など基礎知識となる理科の知識を生かし、医療分野で応用するための学問です。心臓ペースメーカーや人工肺、人工透析の性能を高める技術、再生医療など、研究対象は多岐にわたりますが、いずれも患者さんの負担を減らすための装置や機器の開発です。この分野に興味があるあなたは、理系の幅広い知識が必要となりますから、高校生のうちは数学を含め、理科系の科目をしっかりと学んでおいてください。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

医療機器製造会社開発技術者、製薬会社開発技術者

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