コンピュータなど電子デバイスには、さまざまなエラーが起こります。その中には、運用上ほとんど問題ないものも含まれます。例えば、ディスプレイに一瞬ノイズが出る場合があります。これは4Kと呼ばれる超高精細の大画面テレビなら問題ですが、スマートフォンのような小さい画面なら気になりません。しかし、このエラーの原因となる部品(LSI:集積回路)をテストしてみると当然故障と判断され、廃棄されてしまいます。これはコスト面からは損失です。そこで、エラーが許せる範囲であれば、エラーを起こすLSIも製品に使ってよいのではないかという考え方があります。
この考え方をさらに押し進めて、エラーが出るLSIと最初から同じものを作ろうという研究を行っています。例えば、コンピュータには省電力化をするための装置があります。この装置はその時の仕事の状況で、たくさん仕事をする必要がある時は電力をたくさん消費し、仕事が少ない時は消費電力を落とします。この装置にエラーが起きることで効果が多少落ちたとしても、大きな問題になりません。
例えばはじめの段階から、「5%程度効果が悪くてもよい」というエラーが起きているLSIと同じような設計にすれば、制御回路が省けるのでLSIの面積を約半分にすることができます。そうなればスピードが速くなりますし、さらに良いことに回路面積が減ったことで製品全体の消費電力が減らせるかもしれません。つまり、消費電力を減らすという目的を別のアプローチで達成することができるのです。 1つの機能だけに注目すると、どうしてもそれを強化しようとしてしまいがちですが、全体のバランスを考えることが大切です。製品ごとの電子部品(LSI)の品質に対する要求を見極めて設計すれば、無駄なく、信頼性の高いバランスの取れた製品を作ることができるのです。
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情報科学部 准教授 市原 英行
情報科学部では、社会のインフラを支えるコンピュータとネットワークの研究をしています。私の所属するコンピュータデザイン研究室では、その中でもコンピュータの信頼性、例えば、壊れにくいコンピュータとか、壊れても自分で問題を見つけて元に戻るコンピュータといった頼れるコンピュータを研究しています。この研究は単に技術だけでなく、社会が何を必要としているかも重要な研究課題になります。時代が求める信頼できるコンピュータに興味があるなら、ぜひ私たちと一緒に研究しましょう。