夢ナビ 夢ナビ

検索結果一覧へ戻る

講義No.06071

看護と哲学をつなぐことで、看護現場が変わる

既成概念を取り払って物事をとらえる

 看護学と哲学とは、学問上、かけ離れた存在のように思えます。ところが、看護師たちの医療現場での仕事のしかたを、より事実に即した形で理解するのに哲学が役に立つことがあります。
 一般論として、よく、「人の痛みというのはその人個人の身体の中で起こっている主観的なものだから、他人にはわからない」などと言うことがあります。しかし本当にそうでしょうか。哲学では、そうした既成の概念や枠組みを一度取り払い、実際に目の前で起きていることをとらえ直します。

患者の痛みが「見えている」看護師たち

 例えば病棟で、患者が自分の痛みを表すのに1から10の数値を用いて「3くらいの痛み」だと言うときに、看護師が「もっと痛いのでは? お薬のみましょうか」と応答するケースがあります。看護師は毎日患者をケアしているため、その人の痛みがよく「見えて」いて、患者が言った数値ではなく、目の前の痛みに反応しているのです。これは、看護師の身体が現場の状況に即して応答している例で、「実践知」といえるものです。
 患者は看護師との対話を通して自らの痛みを再認識し、ケアを受け入れます。もちろん中には、「いや、痛くない」と言う人もいます。そうした「ずれ」とも言える反応が返ってきたときに初めて、看護師は、「痛みというのは主観的なものだから」と考えるのです。

現象学的見地で看護現場を再認識

 人が生きて暮らしている現実世界の成り立ちを、既存の枠組みを棚上げしてとらえ直し、記述する。これは哲学の中でも現象学といわれる学問領域の取り組みです。看護の現場においても、そこで起きている事実をありのままに記述し、それらを看護師にフィードバックすると、看護師の自らの仕事に対する理解の枠組みが変わり、現場の動きも組み替わっていきます。無自覚なままに自分が行っていたことを再認識することで、看護についての理解も深まる、そんなプロセスを促す手がかりとして、哲学は重要な役割を担っているのです。


この学問が向いているかも 看護学、看護哲学

東京都立大学(旧・首都大学東京)
健康福祉学部 看護学科 教授
西村 ユミ 先生

先生の他の講義を見る 先生の著書
メッセージ

 私は、看護学の領域で、複数の人が一緒に仕事をするということがどのように成り立っているのかを研究しています。あなたは、勉強したり、将来の夢を思い描くとき、「自分は一人で行動している」と考えているかもしれませんが、よくよく突きつめてみると、家族や先生、ライバルであり仲間でもある友だちなど、多くの人が関わって今のあなたの行動を支えていることに気づくでしょう。そうした考え方をしてみると、今後の生き方や人生の選び方も変わってきます。ぜひ、自分を見なおす機会を作ってみてください。

大学アイコン
西村 ユミ 先生がいらっしゃる
東京都立大学(旧・首都大学東京)に関心を持ったら

 東京都立大学は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

TOPへもどる