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講義No.05917

早くきれいに傷を治す

傷口を昔は乾かし、今は潤す

 昔は擦り傷や切り傷、裂傷などの「創傷(そうしょう)」の治療には「傷口を乾かす」のがよいとされていました。しかし最近は「傷口を潤す」ほうが治癒を早めると言われています。あなたも創傷保護パッドなどと呼ばれる絆創膏(ばんそうこう)を知っているでしょう。そのような絆創膏にはハイドロコロイド素材が使用されており、傷口から出る滲出液(体液)を保持するのです。滲出液には治癒力を高める増殖因子などが含まれており、湿潤環境と低酸素の状態を保つことにより、創傷治癒に関連する細胞を活性化・増殖させ、傷の治りを早めるのです。このように、創傷治癒に有効な働きをする物質は現在いくつか研究されており、そのひとつが甲殻類に多く含まれるキトサンです。

創傷治癒を促進する「キトサン」

 創傷治癒には、段階を踏んだ体内細胞の働きが必要です。まずは白血球が細菌や死んだ組織を消化し、次に血管内皮細胞、線維芽細胞が土台(肉芽組織)をつくり、最後に上皮細胞が働いて傷を治していくのです。キトサンには白血球の一種であるマクロファージを活性化し、増殖因子の産生を増加させる働きがあることが、これまでの研究で明らかになっています。創傷治癒過程では特に血管内皮細胞や線維芽細胞の働きを促進し、傷の治りを早めるのです。

細胞レベルで傷を早く修復する研究

 治りづらい創傷のことを「難治性創傷」といいます。難治性創傷を治すためには、はじめに先にあげた治癒の段階において、どこの細胞の働きが滞っているのか、治癒の遅れは何が原因となっているのかを知ることから始まります。次に滞っている過程を活性化させるために物質を投与したり細胞を導入したりするのです。創傷治癒という目に見える現象から細胞レベルのミクロの現象へと掘り下げて、起きている現象を探っていきます。今後の創傷治癒の研究は、例えばiPS細胞を使って働きの止まった細胞を活性化したり、遺伝子操作により機能を働かせたりするなど、よりミクロなレベルでの試みになっていくでしょう。


この学問が向いているかも 医学、獣医学、生物学、細胞工学

酪農学園大学
獣医学群 獣医学類 教授
上野 博史 先生

メッセージ

 何かわからないことがあった時に、ただ「わかりません」と答える学生が増えています。答える前に、まず、どうしてなんだろう? なぜなんだろう?と考えてみてください。それで自分の知識や考えで答えを出せることもあれば、壁にぶちあたることもあるでしょう。「答えを得るまでの過程」でこそ、いろいろな知識を得て、回り道をしながら人間は成長します。研究の道は答えがないところを進むものです。安直に答えを得ようとするのではなく、過程における「なんで?」を大切にしてほしいと思っています。

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上野 博史 先生がいらっしゃる
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 北海道の政治・経済の中心都市札幌から快速電車で10分、本学はそこに132haの広大なキャンパスを構えています。世界の人口が増幅を続ける中、40%前後の我が国の食料自給率は、今後ますます問題となるのは確実です。そうした環境下にあって、大地を健やかに育て、健康な食物を育み、それを食して健やかな人が育つ。こうした「循環と共生」をテーマに掲げながら、学生一人ひとりの個性や能力を最大限に引き出せるような教育を実践することを使命と考えています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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