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講義No.05813

安心して魚を食べるために―有害重金属と生物濃縮を考える―

公害問題解決後も残る有害重金属問題

 日本では、1950年代から70年代にかけて、さまざまな公害問題が起きていました。工場排水などに含まれる鉛、水銀、ヒ素、カドミウムなどの有害重金属による健康被害は、最たるものでした。その反省から、環境基準が厳しく決められ、企業もそれを守る努力を重ねて、ほぼ100%、基準を満たすことができています。したがって、このところ、有害重金属による汚染は非常に少なくなっています。しかし重金属は分解や無害化がされず、いつまでも土壌や湖、海底に残っています。

重金属は生物濃縮で魚に蓄積

 水中に溶け出した重金属は、プランクトンが吸収し、小魚→大魚→人間といった順に食べていくこと、つまり食物連鎖の中で、生物の体内に蓄積されます。食物連鎖の上位にある生物の体内では、より濃度が高くなっていきます。これを生物濃縮と言います。注意が必要なのは水銀で、水銀を体内に持った魚を妊婦が多く食べると、胎児の神経系の発達に悪影響を及ぼす可能性があるため、各国で注意が呼びかけられています。

重金属の汚染源はゼロにはならない

 駿河湾における生物中の有害重金属濃度の調査では、水銀は確実に生物濃縮されていることがわかりました。また、東京湾での調査では、河川の増水時に濃度が高まることが判明しました。その発生源は、50~60年前に大量に使われた、水銀を含む農薬が土壌に残っているからではないかと考えられています。
 また、日本では禁止された有害重金属を含む塗料が入港した外国船に使われているとか、越境汚染で大気から地表に落ちてきた有害物質が海や湖の底に堆積するなど、有害重金属による環境汚染がゼロになることはありません。現状では、日本近海でとれた魚を食べて健康被害を起こすことはありませんが、アメリカの五大湖などでは、水銀などの生物濃縮の調査研究が盛んに行われてきており、日本でも将来を見据えて、その必要性が高まっています。

古くて新しい環境問題~重金属汚染~

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重金属はどこからやってきてどう私たちに影響を与えるか

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世の中に存在する環境問題

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この学問が向いているかも 環境化学、地球化学

静岡県立大学
食品栄養科学部 環境生命科学科 教授
坂田 昌弘 先生

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メッセージ

 少子高齢化が進み、人々の健康意識が高まっています。健康の維持増進を図るためには、摂取する食品や水の安全性が重要な課題です。安全・安心な食品や水の確保には、環境、つまり、大気、水、土壌を清浄に保つことが必要不可欠です。
 一方、地球規模での気候変動や環境汚染の問題は、農産物などの食料生産ともかかわる重要な課題です。このような、環境、食、健康をキーワードとするさまざまな問題には、世界中で大きな関心が集まっています。私たちを取り巻く、人、食、環境をともに考えていきましょう。

先生の学問へのきっかけ

 1950年代から70年代にかけて日本に、化学物質による深刻な公害問題があったことを知っていますか。そんな時代、大学の理学部化学科に入りました。大学で勉強する中で、当時大きな社会問題だった公害の原因物質を研究して、公害問題の解決に役立ちたいと思うようになりました。また、ワンダーフォーゲル部に所属したこともあり、「将来、自然環境に関わる研究をする」という目標を立てました。現在、中国からのPM2.5による越境汚染や、環境中の重金属汚染の解明など、環境問題の研究に取り組んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

環境コンサルタント業・試験研究機関環境分析、同環境リスク・安全性評価、金属製造業研究開発

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坂田 昌弘 先生がいらっしゃる
静岡県立大学に関心を持ったら

 静岡県立大学は、5学部9学科を有し、国際化・情報化・高齢化・環境問題という21世紀における最重要課題を展望しつつ、新しい時代を支える有為な人材の育成を目的としています。自主性や公共性を強く意識し、地域社会からの評価を得られるように、大交流時代において選ばれる大学を目指します。研究分野では、文科省のグローバルCOEプログラムに採択され、研究レベルが国内トップクラスといえます。

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