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講義No.05753

細胞内の高性能掃除機が難病治療の切り札になる

細胞内の高性能掃除機オートファゴソーム

 必要なときだけ、細胞のなかで作られるロボット掃除機のようなものがあります。「オートファゴソーム」と呼ばれ、ミトコンドリアと小胞体の接点で作られることが、2013年にわかりました。作り出されるのは細胞内にゴミがたまって処理が必要なときと、細胞がエネルギー不足になって栄養補給が必要なときです。オートファゴソームは細胞内の一部を取り込んで分解し、エネルギー源に変えることができるのです。さらにオートファゴソームは、細胞に侵入してきた病原体をやっつける機能があることもわかってきました。

オートファゴソームは病気も防ぐ

 遺伝性の神経変性疾患の1つにハンチントン舞踏病があります。発病するメカニズムは明らかになっていて、突然変異によって特定のタンパク質のなかにグルタミンがたくさん並ぶことによって引き起こされます。問題は並ぶグルタミンの数で、17個くらいなら大丈夫でも、60個ほどもつながると病気になるのです。ここで興味深いのがオートファゴソームの反応です。グルタミンが害のない数の段階では無視するものの、身体にとって害となる数に達するやいなや攻撃にかかるのです。また、アルツハイマー病もタンパク質の異常が原因のひとつですが、これもオートファゴソームが退治しようとします。

がん細胞にも存在するオートファゴソーム

 オートファゴソームは、がん細胞のなかにもあります。がん細胞は転移するときに過酷な状況に置かれるのですが、そこでオートファゴソームがエネルギー源を作り出し、がん細胞を助けているのです。であるなら、がん細胞内のオートファゴソームの動きを止めることができれば、がんの転移を抑えられる可能性が出てきます。
 逆にハンチントン舞踏病やアルツハイマー病の場合は、オートファゴソームを細胞内でどんどん作り、異常タンパク質を分解させればよいのです。このようにオートファゴソームを人工的に制御できれば、難病治療につながる可能性があるのです。


この学問が向いているかも 細胞生物学、細胞工学、遺伝子工学

大阪大学
医学部 医学科 遺伝学教室 教授
吉森 保 先生

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メッセージ

 私は高校生のころ、最初は文系志望で、大学では心理学を勉強したいと考えていました。最終的には生物学を選びましたが、その過程ではずいぶんと心が揺れ動いたものです。進路についてはうんと悩み、迷っていいと思います。ただし、一つ大切にしてほしいのは好奇心です。いつも知的好奇心を絶やさないこと、これが人を人として成立させる条件だと思うのです。そうして探究した結果が役に立てば言うことないですし、仮に役に立たないとしても、誰も知らないことを自分が見つけてやる、そんな野心を持ってください。

先生の学問へのきっかけ

 生物学を専門にしたキッカケは、いろいろな本を読むうちに、人間や動物の発達や行動に興味を持ったからでした。また物理の専門家だった父が、「これからは生物学が面白くなる」と言っていたことも強く記憶に残っていたのだと思います。ちょうど、分子生物学の分野がめざましい発展を遂げていた時代でした。
 やがて研究室に入り、「世界の誰も知らないことを見つける面白さ」を実感しました。そしてさらに、大隅良典先生の研究所で、2016年ノーベル生理学・医学賞を受賞したオートファジーの研究と出会い、没頭することになったのです。

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 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。

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