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講義No.05717

薬の働き場所をコントロールする不思議な粘土

作るのが難しくない

 「ハイドロタルサイト」は粘土鉱物のひとつです。粘土鉱物とは粘土を構成している鉱物のことで主に層状ケイ酸塩鉱物です。ハイドロタルサイトは、少し異なる層状炭酸塩鉱物で天然にはあまり存在しませんが、作り出すことは比較的容易です。マグネシウムとアルミニウムを混ぜて、アルカリを加えて沈殿させて作ることができます。

胃にやさしい薬の正体

 ハイドロタルサイトは日常生活に非常に役立っています。例えば胃薬では、胃酸を抑える薬として広く使われています。薬の広告などで「胃にやさしい」と言われているのはハイドロタルサイトの効用です。マグネシウムとアルミニウムの両方が入っているので、胃に入ると最初は両方が溶けますが、ある時点からはマグネシウムだけが溶け続けアルミニウムは溶けなくなります。この時間差によって胃酸が急激に酸性になりすぎず、ちょうどいい状態(pH3程度)に保つので胃の壁を守ることができ、胃が荒れることを防いでいるのです。逆にアルカリ性が強くなることもありません。アルカリ性が強いと胃にピロリ菌がいる場合、活性化して胃がんや胃潰瘍の原因となってしまいます。

がん細胞を直接攻撃する

 薬を含んだハイドロタルサイトを肌に塗ると、汗の成分とイオン交換して薬が少しずつ出ていき、浸透させることができます。例えばビタミンCを入れておくと、肌に浸み込ませることができる美白剤になります。
 またハイドロタルサイトを油成分でコーティングすると耐酸性が強くなります。酸性の強い胃酸のある胃の中で約2時間は溶けることがありません。食べ物を摂取して消化するのは約2時間ですから、薬は胃では放出されずにその先の十二指腸や小腸に直接投与することができるのです。また、例えば十二指腸にがんがある場合に、抗がん剤を狙った場所に運ぶことができます。正常な細胞を傷つけずに、がん細胞だけを攻撃することが可能になるのです。ハイドロタルサイトは医療分野で新しい可能性を切り拓いています。


この学問が向いているかも 無機材料化学

岡山大学
工学部 化学・生命系 教授
亀島 欣一 先生

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メッセージ

 高校生のあなたは、これから進学するに当たって、まずは、「理系に進みたい」、あるいは「文系に進みたい」、そのどちらかに決めなければならないと考えていると思います。まだ高校生の段階ですので、あまり文理選択ばかりを意識せず、もっと幅広い知識を吸収して大学に来てください。私は工学系にいますが、分野にとらわれない幅広い知識が研究を進めていくときや、自分の専門を決めるときにも重要であると考えています。岡山大学でお待ちしています。

先生の学問へのきっかけ

 科学が大好きで、小学生の頃は天文学者に、中学生頃にパソコンが登場した後は、LSIの設計者になりたいと考えていました。そこで、大学進学時は工学部の電気系を志望していましたが、実際には物質・材料系に進むことになりました。その後、学科配属で無機材料・セラミックスの分野へと進み、卒業研究生としてセラミックス原料を扱う講座に配属されました。研究室で「未知物質を探索する実験」を行った時に担当した物質が粘土鉱物の1つである「カオリナイト」という磁器の原料で、これが粘土鉱物を意識した最初のキッカケでした。

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亀島 欣一 先生がいらっしゃる
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 岡山大学は、これまでの高度な研究活動の成果を基礎として、学生が主体的に“知の創成”に参画し得る能力を涵養するとともに、学生同士や教職員との密接な対話や議論を通じて、個々人が豊かな人間性を醸成できるように支援し、国内外の幅広い分野において中核的に活躍し得る高い総合的能力と人格を備えた人材の育成を目的とした教育を行います。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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