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講義No.05625

クラゲやホタルの光を使って医療分野に生かそう

実は人間も光る生き物です

 すべての生物は光を放っています。生物の生命活動において体内にある物質が酸素と反応しているためで、もちろん人間も例外ではありません。この微弱な光はバイオフォトンと呼ばれ、高感度の検出器でようやく確認できる程度の光ですが、ホタルなどの発光生物は有機化合物のルシフェリンとタンパク質の酵素ルシフェラーゼを体内で反応させて強い光を作り出し、より積極的に光を使っています。その目的はホタルならばオスとメスの交信、ウミホタルならば敵の目くらまし、深海魚は餌を誘い込むためと実に多様です。ただ、光る仕組みは似ていても、光るために使用する有機物質の構造は微妙に異なっています。

期待は医療分野での利用

 こうした発光生物の仕組みを解析し、化学的に応用するのが光生物化学という学問です。例えば2008年にノーベル賞を受賞した下村脩(おさむ)氏は、オワンクラゲからGFP(緑色蛍光タンパク質)と発光タンパク質を発見しました。発光タンパク質はカルシウムイオンが付着すると光る性質を持つので、試薬として用いれば体内のカルシウムイオンの増減を探ることができるのです。同様にウミホタルの発光機能も遺伝子の発現を調べる試薬に使えるなど、主に医療分野での利用が見込まれています。

ホタルの光に大きな可能性が

 一方、ホタルの発光の仕組みである、ATP(アデノシン三リン酸)との反応を生かす用途もあります。ATPは生物がエネルギー源として必ず使うため、宇宙空間に生物がいるかどうかの調査に利用できるのです。また赤く光るホタルの発光物質で、病気の患部を見つける研究も進んでいます。さらにホタルをまねした人工の発光物質は、コンサートで利用するケミカルライトなど、エンターテインメント業界や防災分野への技術貢献も見込まれます。ホタルの発光機能は古くから研究されていますが、まだすべてが解明されているわけではありません。機能の探索とともに、活用方法も盛んに研究されるなど、発光生物の中でも大きなポテンシャルを秘めているのです。


この学問が向いているかも 有機光化学、光生物化学、超分子化学

電気通信大学
情報理工学域 III類(理工系) 化学生命工学プログラム 教授
平野 誉 先生

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メッセージ

 美しく光るホタルは小さな体にもかかわらず、とてつもなく光る力を持っています。高い効率で光の粒を生み出したり、発光を点滅させるという、試験管の中では起こせないような現象を難なくやり遂げているからです。ほかにも素晴らしい機能を持った生物はたくさんいます。そんな彼らから機能を学び、応用していくことで、今までなかった技術の開発が可能になっていくのです。光に関わる新技術は、医療やエネルギー問題、二酸化炭素の削減などの分野で、大きな将来性を秘めています。ぜひこの大きなテーマに挑戦してください。

先生の学問へのきっかけ

 埼玉県の豊かな自然の中で生まれ育ち、ザリガニや虫をとるのが大好きな子どもで、将来は生き物に関わる仕事ができたらいいなと思っていました。そして高校生のときに読んだ分子生物学の新聞記事に触発され、生物を分子の見方で理解することに興味を持ちました。また、当時から「生物と光の関係」に着目していたこともあり、大学では有機光化学の研究室に所属しました。光化学の実験は大好きですが、生物の研究から離れてしまったなと感じていたところ、発光生物の研究室から誘いがあったのです。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

製品開発技術者/材料開発研究員/材料分析研究員/材料設計技術者/材料製造技術者/薬品開発研究員/情報処理技術者/教員

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平野 誉 先生がいらっしゃる
電気通信大学に関心を持ったら

 電気通信大学は、東京にある理工系国立大学で、「工学」と「理学」のうち、特に情報分野および理工分野を核とした教育研究を行っています。先端科学技術を支える全分野、例えば、情報、通信、電子、知能機械、ロボティクス、光科学、物理、量子、化学、物質、生命などの分野を網羅しています。社会で活躍する人材の育成をめざし、ものづくりに意欲を燃やす学生の期待に応える教育環境を提供します。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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