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講義No.05262

源氏物語の「蛍」に、日本人の感性のルーツを探る

1000年前の恋のワンシーン

 約1000年前の文学『源氏物語』は、光源氏とさまざまな女性たちとが織り成す恋物語をその骨格としています。いつの時代も、恋とは切なくロマンチックなものであり、『源氏物語』にも、恋物語にふさわしいシーンがいくつも描かれています。
 その一つが「蛍」の巻のシーンです。玉鬘(たまかずら)という姫君の姿を、一人の男性に見せようと考えた光源氏は、暗闇のなかでホタルを放ちます。ホタルの光に照らし出された姫の美しさに、男性はますます恋心を募らせていくのですが、平安時代の文学には、こうした美しい光を放つものとしてのホタルがたびたび登場しています。

恐れの対象から、風情ある光への転換

 しかし、ホタルの光を美しいもの、風情のあるものと感じる心は、平安時代以前には見られないものです。それどころか、『日本書紀』には、蛍火は邪悪な神の形容として登場します。恐れの対象としてのホタル、闇に光る青白い光は人魂のように見えたのかもしれません。
 恐れの対象から風情ある光への転換は平安時代の初期に盛んに学ばれた漢詩文の影響といわれています。中国の歴史書に「蛍雪の功」という故事が出てくるのですが、これは貧しい家の若者が、ホタルの光や雪の明るさをたよりに、夜の勉学に励んだというものです。卒業式でよく歌われる「蛍の光」もこの故事からきています。

日本人の感性のルーツを探る

 蛍の光で女性を見るという趣向は、この故事に基づいたものです。漢詩文で「蛍雪の功」に触れた人々が、少しずつホタルの光に肯定的なイメージを抱くようになり、『源氏物語』などのホタルのシーンに結びついたのでしょう。ただし、日本人の中には、蛍火への恐れの気持ちも完全に消えることなく、今日まで生き続けています。アニメ映画『火垂るの墓』で、蛍の光に人の命が投影されていたことも思い出されます。
 『源氏物語』の一コマから、日本人の感性のルーツを探る旅に出てみました。古典文学を読むことは、今日の私たち自身を照らし出す手がかりでもあるのです。


ホタルの文学史

この学問が向いているかも 日本文学、古典文学、平安文学

フェリス女学院大学
文学部 日本語日本文学科 教授
竹内 正彦 先生

先生の著書
メッセージ

 古典文学ははるか昔に書かれた文学です。例えば源氏物語は約1000年も前に書かれたものですから、想像もできないくらい昔に書かれたものであることは確かです。そんな昔の文学なんて、現代に生きる私たちには関係がないと思うかもしれません。しかし、古典文学はそれだけ長い間、時代を超えてさまざまな人々に読み深められてきたのでした。古いけれど古びない文学、それが古典文学なのです。複雑でとらえがたい「人の心」を綿密に描いているこの文学世界をぜひ一緒に読み深めていきましょう。

先生の学問へのきっかけ

 高校2年生の頃、古文の時間に和歌について調べて発表する機会がありました。一人に一首ずつ割り当てられたのですが、さまざまな参考図書を見ると、解釈が違っている箇所があり、強い衝撃を受けました。それまでは古文の勉強は単語と文法を覚えて訳をすれば事足りるなどと考えていましたが、古文には長い時間を経てもまだわからないことがある、いや、時間が経つうちにわからないことは増えていくのではないかと感じました。時の流れにあらがいながら真実を掘り起こしてみたい。そんな思いが私を古文の世界に強くひきつけたのでした。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

中学・高等学校教員/大学院進学/テレビ局アナウンサー/航空会社客室乗務員/地方公務員/銀行員/金融会社営業/食品会社営業など

大学アイコン
竹内 正彦 先生がいらっしゃる
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 フェリス女学院大学は、1870年に日本初のキリスト教系女子教育機関として誕生して以来、
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 主体性を伸ばす少人数教育やきめ細やかな学習サポート、豊富な海外留学制度や個人相談を重視した就職サポートなど、学生の意欲と質を高める制度も充実しています。
 創立者メアリー・E・キダーは、明治期に女子教育を行うという目標に果敢に取り組みました。フェリス女学院大学で、あなたらしい目標を探してチャレンジしてみませんか?

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