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講義No.04945

フィールドワークで地球規模の健康をめざす! 人類生態学の可能性

人類生態学の視点で考える「健康」

 世界保健機関(WHO)憲章は、健康を、「完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」と定義しています。人間には食物となるほかの生物や、生命を維持できる気候、水、居住空間が必要なので、うまく環境を利用しながら暮らしていかなければなりません。また、人間は言語を使い社会組織を作って、相互にコミュニケートして生活しています。人類生態学の視点では、自然環境とヒトの集団が、言語や技術や社会組織を介してうまく相互作用し、そのシステムが長期的に維持されることが人間の健康につながると考えます。

半ズボンが招くマラリア感染

 地球規模で健康を考えるとき、感染症対策は非常に重要です。しかしどんな手立てが最も効果的か、現地の社会システムとうまくバランスが取れるのかなどを調査しないと、現地の人の健康につながりません。マラリアがたびたび流行するガダルカナル島では、マラリア原虫を媒介するファロウティ・ハマダラカは、日没後2時間に、屋外で、もっとも活発に吸血します。この時間帯の村人の行動や衣服をくまなく観察調査したところ、半ズボンの人が長ズボンの人に比べてマラリアに罹りやすいことがわかりました。

フィールドワークとモデリングの組み合わせ

 では、仮に村人全員が長ズボンをはいたらマラリア感染率はどうなるでしょうか。コンピュータでシミュレーションを行うと、70%未満の着用率ではほとんど効果がありませんが、もし95%の人が着用すれば2年以内にマラリアをこの地域から根絶できるという結果が出ました。しかし現実問題として、95%の人に長ズボン着用を強いるのは、コスト面からも人道的にも不可能です。例えば乳幼児に日没後の屋内では靴下を履かせるなど、別の対策を考えるべきでしょう。このように地道なフィールドワークとモデリングを組み合わせて、国際協力がもたらす結果を多面的に評価することは、今後ますます重要になってくるでしょう。

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この学問が向いているかも 人類生態学

神戸大学
医学部 保健学科 教授
中澤 港 先生

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メッセージ

 グローバリゼーションの進展とともに、保健の分野でもグローバルヘルスという考え方が重要になっています。例えば感染症には国境はなく、ひとつの国だけでは解決できない問題です。そこで国際協力が必要になりますが、個々のアクションには必ず副作用があります。細菌が入っていない飲料水を供給するために井戸を掘ったのに、地下水からヒトに有害なヒ素が混入して慢性中毒の患者が出てしまったケースがあります。人間と環境をつなぐ社会組織や技術をトータルで考える人類生態学を、ぜひ一緒に研究しましょう。

先生の学問へのきっかけ

 東京生まれで、自然に憧れ、子どもの頃は釣りや昆虫採集に熱中していました。でも、ゴミが浮いているような濁った水では、せいぜいウグイやフナくらいしか釣れません。「昔は泳げた」などという話を聞き、どうしてこんなに汚してしまったのかと考えたりしていました。小学6年の時、有吉佐和子の『複合汚染』という本を読んで衝撃を受け、「人間は環境をよくする工夫ができること」「環境は少数の要素だけを調べてもわからないこと」「研究者が少ないこと」が強く印象に残り、自分が研究してやろう!と考え、現在の専門分野に進みました。

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中澤 港 先生がいらっしゃる
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 また、神戸大学では、人文・人間系、社会系、自然系、生命・医学系のいずれの学術分野においても世界トップレベルの学術研究を推進すると共に、世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、 国際的で先端的な研究・教育の拠点になることを目指します。

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