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講義No.04552

食べ過ぎとサヨナラする鍵は、脳にあり?

おいしいものを食べ過ぎてしまうのはなぜ?

 甘いお菓子やケーキ、揚げ物などの食べ物は、多くの人がおいしいと感じます。ダイエット中でも、それらを見るとつい食べ(過ぎ)てしまって、挫折することもよく聞く話です。食べ過ぎの原因には、心理だけではなく、身体のメカニズムも関わることがわかってきました。

食べ過ぎのスイッチを入れる脳の変化

 マウスに1日のうち長時間食べ物を与えず、ある時間帯にだけ濃い砂糖水と通常の食べ物(固形飼料)を与えて、彼らの摂取行動を観察します。毎日この実験を繰り返すと、最初の1時間での砂糖水を飲む量が徐々に増えていき、実験の10日目には初日の約4倍も飲みました。マウスの体重の約5分の1に相当する砂糖水をわずか1時間で飲んでしまったのです。この結果を人間に単純には当てはめることはできませんが、驚きの行動と言えます。
 実験中のマウスでは、脳の中にある「報酬を得よう」とするシステムの働きが強くなることがわかってきました。つまり、甘くておいしい砂糖水を飲むことによって得られる心地良さや満足感を「もっと欲しい」という欲求のスイッチが入ると考えられます。また、マウスは自由な食事をとれないのでストレスを感じています。甘いものを摂取すると、ストレスが軽減されると言われています。つまり、砂糖水を飲むとストレス軽減という報酬も得られるのです。これらの報酬を得る経験が繰り返されると、脳に変化が生じてしまい、砂糖を多くとろうとする行動が強く学習されるのだろうと考えられます。

食べ過ぎは防止できるの?

 現代人は甘いものを食べて得られる心地良さや満足感、そしてストレス軽減を日頃から体験済みです。甘いものを食べる行動と結果として得られる報酬との関係性を脳が無意識に記憶し、ダイエットなどの食事制限中には、それを思い出してしまうために「もっと欲しい」スイッチが入るのかもしれません。これらのメカニズムがより詳しく解明されれば、食べ過ぎを効率的に抑える方法の開発や過食症の患者の治療に役立つと期待されます。


この学問が向いているかも 実験心理学、脳科学、神経科学、食行動学

大阪大学
人間科学部 行動学科目 行動生態学講座行動生理学分野 教授
八十島 安伸 先生

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メッセージ

 誰もが必ず持っている「脳」。脳の「学習」する働きがあるからこそ、日常のさまざまな行動が実現されています。学習というと、知識の暗記やテスト勉強のことと思うかもしれませんが、学習とは日々「生きること」に深く関わっています。学習にともなって脳は変化し、自分が変わっていきます。脳を変えることは、未来で自分が生きる世界を変えることにつながるでしょう。未来のために文章や事物をイメージして理解できる「力」とその想像や理解を言葉や行動などを通じてほかの人に明確に表現できる「力」をあなたの脳の中に育ててください。

先生の学問へのきっかけ

 動物がさまざまな行動の中から、特定の行動を選択しつつ環境に適応していることに興味を覚え、大学ではショウジョウバエの味の「好き嫌い」や「食べ物の選り好み」を研究しました。ゼミメンバーとワイワイしながら議論することがとても楽しく、また、自分なりの疑問や問題を見つけ、それを突き詰めて調べるプロセスに学問の魅力を感じました。「食べる」という日常的な行動にも、感覚・感情・学習・動機づけ・意思決定などが複雑に関わること、また、行動選択を左右する快・不快を脳が生み出すことには、未だに不思議さを感じます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

高校教員/地方公務員/国家公務員/製薬会社/飲料メーカー/製菓メーカー/研究開発受託会社研究員/食品素材メーカー/コンサルティング/大学院進学

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八十島 安伸 先生がいらっしゃる
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 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。

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