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講義No.04382

夏目漱石『こころ』をどう読むか

謎の多い小説

 教科書に載る『こころ』は、「先生」の友人「K」が自殺する前後のくだりが中心となっています。授業では、友情や三角関係、友を裏切ったことへの罪悪感などに焦点が当てられるのではないでしょうか。しかし、教科書的読みから離れ、全体を精読したとき、まったく違う小説であることが見えてきます。例えば、「先生」は遺書を書き、「私」はその遺書を手記の中で公開しますが、果たして「先生」は遺書の中に事実をすべて書いているのか。脚色したり、隠蔽したりしていないのか。「私」は手記をすべて正直に書いているのか。『こころ』という小説は真実を読み解く力を養う上で最適の1冊だといえます。

いつもと違う読み方を!

 深く読む力を身につけるために、例えば最終章から読んでみるのもひとつの方法です。結末に「あなた限りに打ち明けられた私の秘密として、凡てを腹の中にしまっておいて下さい」と出てきます。それなのに、なぜこの手記は書かれ、「先生」の遺書が公開されることになったのか。あるいは、「下 先生と遺書」の各章はすべてカギ括弧で括られているのですが、その中で第1章は「……私は」と書き出され、まるで遺書の途中から引用されているかのように感じられます。漱石はどんな仕掛けを施したのか。大いに興味のわくところです。

小説をより楽しく読む方法

 樋口一葉の文章には会話文の範囲を示す「 」が見当たりません。読者は、読んでいる部分が「語り手の声=地の文」なのか「登場人物の声=会話文」なのかについて自身で判断することを強いられるのです。小説の中の仕掛けはいろいろなことを考えさせます。人々が主体と呼んでいるものは、実は直接話法の会話文を示す「 」によってその存在が保証されています。しかし、「 」によって表現されなければ存在できないものとは何でしょうか。我々も文章を書く時、さまざまな仕掛けを施します。何から書き出せば相手に伝わりやすいか。本音をどう表現するか。そうした身近な視点から小説表現に触れることも文学を楽しむひとつの方法なのです。


高校生のための小説塾―『こころ』を読む―

この学問が向いているかも 日本近代文学、国文学、物語学

愛知淑徳大学
文学部 国文学科 教授
小倉 斉 先生

先生の著書
メッセージ

 1970年代、学生運動の真只中。講義もほとんど行なわれない学生生活でした。アパートの一室で闇雲に読み、ひたすら考える日々。人は何に悩み、それをどう解決していくのかという疑問にひとつの答えを与えてくれたのが文学だったのです。それ以来三十数年にわたり、私は文学研究を続けています。例えば夏目漱石の『こころ』を冒頭から結末へという順番ではなく、ときに結末の章から冒頭へとさかのぼって精読した時、新しい何かが見えてくるはずです。小説に興味をもつあなた。文学を読むことの意味について、共に考えてみませんか。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

中学・高等学校教員、放送業企画/制作、金融業事務、小売業販売、製造業事務、医療業事務/サービス、運送業事務

大学アイコン
小倉 斉 先生がいらっしゃる
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 愛知淑徳大学は、9学部13学科11専攻を擁する総合大学です。「違いを共に生きる」の理念のもと、常に新しい時代に対応できる人材の育成をめざし、独自の学びのシステムを展開しています。実社会で生かせる力や資格取得を目標とし、多様な知識と技術を身につける「全学共通教育」と、学部・学科ごとの専門分野を追求する「専門教育」で、高度な専門知識と実践力、豊かな人間性を養います。総合大学のメリットを生かし、学部・学科の枠を超えて学べる教育環境も整備。学生一人ひとりの学ぶ意欲に応えます。

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