夢ナビ夢ナビは、さまざまな言葉をデータベースから検索・閲覧し、将来の進路を決める“きっかけ”を提供します。

講義No.03244

視点を変えると見えてくる作品の裏側

世界の中心、それが主人公

 ある文学作品で、主人公を困らせる脇役がいるとします。主人公にも、読者にも反感をもたれる存在ですが、それは、一方的な視点でしかありません。その脇役はなぜ、そのような行動をとったのでしょうか。その脇役はどんなところで生まれ、どんな環境で育ったのでしょうか。作家は、自分の伝えたいことのために主人公をつくり、脇役は主人公の都合に付き合わされます。しかし、こうしたスタイルでは描ききれない限界を、文学を通じて知ることもあります。

脇役には、脇役の人生がある

 評価の定まった文学作品を、別の視点で書き直したらどうなるでしょうか。例えば、19世紀にシャーロット・ブロンテによって書かれた、イギリス文学の傑作として名高い『ジェーン・エア』という作品があります。周囲の心無い仕打ちや社会の因習にもめげず、自分の気持ちに正直に生きた女性の話で、ヒロインが美女ではないことや、女性から愛を告白するなど、当時の社会常識を覆す画期的な作品でした。しかし、どんな作品にも偏見や歪(ゆが)みがあります。やがて20世紀に入り、ジーン・リースという作家が『ジェーン・エア』に登場する脇役を主人公とした作品を発表しました。ヒロインを苦しめる人物・バーサの視点で描かれた『サルガッソーの広い海』という小説です。

白黒は簡単につけられない

 『ジェーン・エア』では、ヒロインの芯の強さや賢さを強調するために、バーサは醜い容姿の持ち主として描かれています。そこにジーン・リースは、クレオールへの蔑視があると感じました。ここで言うクレオールとは、植民地生まれの白人のことを意味します。バーサは、イギリスの植民地だったジャマイカ出身という設定なのです。ジーン・リースも、同じカリブ海域のドミニカで育ったクレオールでした。
 このように、視点を変えると全く別のものが見えてくることがあります。文学は、そのことに気づかせてくれる媒体でもあるのです。

アイコン

講義を視聴する(1分)

アイコン

講義を視聴する(1分 その2)

アイコン

講義を視聴する(1分 その3)

アイコン

講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも 文学

横浜市立大学
国際教養学部 国際教養学科 准教授
中谷 崇 先生

先生の他の講義を見る 先生の著書
メッセージ

 文学の読み方の手法を教えることはできますが、物の見方や考え方そのものは教わるべきものではありません。作品を読んで何かを感じるためには、理論だけでなく、とにかくたくさん読むことです。“文学”と聞くと、なんだか権威あるもののように感じ、敬遠してしまう人もいるでしょう。でも、「権威づけられたものこそ、疑ってかかれ」が文学の基本です。そしてこれは、どのような学問にも当てはまります。権威主義から解き放たれた批判精神をもって、文学に、そして学問に触れていってください。

大学アイコン
中谷 崇 先生がいらっしゃる
横浜市立大学に関心を持ったら

 横浜市立大学は、「実践的な教養教育」を導入しています。高度な専門知識を教養教育を通じて身につけ、バランスのとれた人材育成を図る教育システムです。日本を代表する国際港湾都市に位置する大学として、世界に羽ばたく人材の輩出を目的に、国際感覚を養うさまざまな取り組みも充実しています。個々の可能性を最大限引き出すための厳しい教育プログラムを愛情を持って進めていきます。

TOPへもどる