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講義No.02736

翻訳や日本語学習に役立つ「役割語」の知識

日本語の一人称はバリエーションがいっぱい

 日本語の一人称、話し手(書き手)自身を表す代名詞は、「わたし」「ぼく」「おれ」「わし」「おいら」など、年齢や性別、地域によってたくさんのバリエーションがあります。例えば、男性が「ぼく」を使うか、「おれ」を使うかで受けるイメージは随分変わるでしょう。一人称代名詞にこれだけ多くの種類がある言語は、日本語だけです。英語の場合、一人称代名詞はすべて「I」なのです。

翻訳に役立つ役割語の知識

 しかし、『ハリー・ポッター』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』といった海外小説や映画の日本語訳では、年をとった魔法使いが「わしは知っておるんじゃ」のような、特徴的な言葉使いをしています。しかし、話している英語のなかに、老人に特徴的な言葉使いがあるわけではありません。「I~」と言っているところを、「わし」という一人称を使って翻訳しているのです。このように登場人物のキャラクターを特徴づけるために、フィクションのなかで使われる言葉を「役割語」と言います。役割語には特定のキャラクターのイメージを強める働きがあるので、海外小説や映画を日本語に訳す翻訳家が、観客がより自然にストーリーのなかへ入っていけるように、キャラクターの役割を考えて、それにふさわしい言葉をあてているのです。このように、よりわかりやすい表現で翻訳するために、役割語の知識が役に立ちます。

自然な日本語をマスターするときにも役割語が有効

 日本語はほかの外国語よりも、話し方や言葉使いがその人の性質・特徴を表す部分が大きいと言われている言語です。外国人が日本語を学ぶとき、男性も女性も最初は「わたし」と教えられますが、上達するにつれて男性は、「ぼく」や「おれ」を使い分けるようになります。これは自分が人からどう受け取られたいかを考えることによって、役割語の概念を身につけていったと考えられます。日本語を学ぶときに役割語の知識をあわせて学ぶことで、より自然な話し方や言葉使いが身につくと言えるでしょう。


この学問が向いているかも 国語学、日本語学

大阪大学
文学部 日本文学・国語学専修 教授
金水 敏 先生

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先生がめざすSDGs
メッセージ

 人間の根源的な問い、例えば「どうして生きているのだろう」と考えることがあるかもしれません。これはなかなか答えの出ない問題です。しかし考えることは、生きる糧になります。人は「考えること」が「生きること」とも言えるのです。身近な中に考えるべき問題は転がっていて、順を追ってそれに考えを巡らすことは生きる喜びにつながります。そして見つけたものを誰かに伝えて共感を得られれば、もっと大きな喜びになります。考える喜び、発見する喜び、伝えて人とつながる喜びを存分に深めることができるのが、文学部の学問です。

先生の学問へのきっかけ

 もともと、言語や文学など、「言葉」に関わることが好きだったことが、今の専門分野に興味を持ったきっかけです。言葉の魅力は「表現方法によって、対象そのものが大きく変わるところ」で、特に高校の古文の授業で聞いた「上代特殊仮名遣い」の話、日本語の歴史や起源に関する新書を読んで強い関心を持ったことが強く影響したと思います。しかし今考えれば、子どもの頃から楽しんできたマンガ、アニメを含めて、いろいろな経験がすべて今の研究につながっていると思います。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

大学人文系学部教員/中学・高校教員/出版社編集業務/新聞記者/地方公務員/博物館学芸員

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金水 敏 先生がいらっしゃる
大阪大学に関心を持ったら

 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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