注意力を高めるには
なにか失敗したときに「よく注意をしなかったからだ」と言いがちです。しかし、注意していれば失敗が防げたでしょうか? というのも、注意は「ひとつのことに意識を焦点化する」ということなのです。ひとつのことに注意を払うと、ほかのことに対しては不注意になります。注意と不注意は裏腹なのです。
心理学の分野で、“注意”は重要なテーマです。人の注意には限りがあります。例えば人はどのくらい長く注意を集中できるのかを調べた「クロックテスト」という実験があります。2時間、時計のような実験装置を見つめ、針が2秒分ジャンプするのを見つけると手元のスイッチを押す、というものです。30分くらい経つと見落としが急に増えます。これを注意の“30分効果”と言います。この理由は疲れではなく、同じことをしていると飽きてくる「心理的飽和状態」に陥るからです。だから少し冗談を言ったり、気分転換したりして、注意を持続させることが大切です。
ヒューマンエラーについて
あなたは「コーヒーを入れるつもりが、ふと気づくと紅茶を入れていた」など、自分でもどうして起こしたのかわからないようなミスをしたことはありませんか? 人は「スキーマ(Schema)」という、過去の経験によって作られ、行動をスムーズに行う枠組みを持っています。これは「コーヒーを入れる」というスキーマと、「紅茶を入れる」というスキーマが似ており、また慣れの程度が紅茶の方が強かったために起こった間違いです。つい何かほかのことを考えている間に、慣れた方のスキーマが活性化してしまったのです。
人は何かするときはまず意図を持ち、行為をともなって目的を果たします。何かの理由があって、もともとの意図を果たすことに失敗することを「ヒューマンエラー」と言います。人はものごとに慣れる前よりもむしろ慣れた後の方がよくヒューマンエラーを起こすこともわかっています。日常生活では大ごとになりませんが、産業現場などでは特に気をつける必要があります。