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講義No.01000

生物は動的平衡にある流れである

食べ物はどこに行くのか?

 口から入った食べ物はどうなるでしょうか。消化されてガソリンのようにエネルギーになるという答えでは、正解にすることはできません。確かに、ファミリーレストランなどで、食品メニューにはカロリー値が記載されています。もちろんこの値は間違いではないのですが、カロリーばかりを気にしていると食べるという行為の非常に重要な側面を見失ってしまうのです。食べることの本質的な意味は、1930年代後半にドイツからアメリカに亡命したユダヤ人の生物学者、ルドルフ・シェーンハイマーが突き止めました。シェーンハイマーは、窒素の同位体(アイソトープ)重窒素を使用し、タンパク質を構成するアミノ酸を識別できるようにし、この食物をもう成長しない大人のネズミに3日間与え、体重も細かく計測しました。すると体重は全く変化していないにもかかわらず、食物から取ったアミノ酸はネズミの体内全体に散らばっていき、体中のタンパク質の中にとどまっていたのです。

動的平衡とは

 アイソトープを含んだ分子が体の中に入っても体重が変化しないということは、もともとそこにあった分子が壊されて体の中から抜け出ているということになります。体内では、組織が絶え間なくアミノ酸より細かい分子レベルにまで分解され、そこに食事で摂取した分子が素早く再合成されて、置き換わっているのです。続いてアイソトープを含んでいない食物を与えれば、アイソトープを含んだ分子は体外に排出されていきます。食べ物は単にエネルギーを供給しているのではなく、次々と体を再構成する分子を供給しているのです。ネズミでは3日で、身体のたんぱく質のほぼ半分が置き換わっています。人間の体も一年もたてば、脳も心臓も骨も一切の例外なく、分子レベルで新たに置き換わっているのです。私たち生命体は、たまたまそこに密度が高まっている分子のゆるい「淀み」でしかありません。これを動的平衡と言い、この流れ自体が「生きている」という事なのです。


この学問が向いているかも 総合文化政策学部

青山学院大学
総合文化政策学部 総合文化政策学科 教授
福岡 伸一 先生

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メッセージ

 わたくしは、2011年4月から新たに本学部の教員となりました。もともと、理工学部で生命科学を研究していましたが、生命をとりまく問題について、より広く、文理融合的に、総合的に考えたいと思い、学部を移籍させていただきました。生命観の文化史的な変遷をふまえつつ、自己と非自己、脳と身体、動的平衡などをキーワードに、生命と文化の現代的な諸問題を考えて行きます。

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 青山学院大学では、「青山学院創立150周年に向けての原点回帰」と銘打ち、大学全体のグローバル化の動きを推し進めています。大学創立当初から、英語で授業を行う伝統のもと、現在、10学部24学科を擁して、「地の塩、世の光」というスクール・モットーを体現すべく、社会に貢献しながら人々を照らし導くサーバント・リーダーの育成に努めています。

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