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講義No.00144

海洋微生物釣りの極意、教えます

いざ、フロンティアへ

 バイオテクノロジーといえば、遺伝子組み換えやクローンなど、科学技術を駆使した最先端の研究と思われがちです。ですがその実態は、自然界に生息する微生物を採取して役に立つ物質を発見する、といった地道な作業の繰り返しなのです。
 その先駆け的な成果が世界最初の抗生物質であるペニシリン。アオカビの抗菌作用の研究から生まれたものです。その発見から70年近く経って、陸上の微生物は調べ尽くされ、残されたのは海洋微生物だけという状況になりました。海は地表面の約7割を占め、しかも未調査の海域も多いことから、有用微生物の宝庫と見られています。
 しかしながら、海洋調査には手間がかかり、単に微生物を採取することさえ容易ではないため、陸上の研究に比べて40年以上の遅れをとっています。しかし、それだけに大発見の可能性が秘められているとも言えるのです。

海がくれた美白剤

 海洋微生物の多くは、塩分濃度の高い環境に適応していく中で、独自の進化を遂げています。また、深い海の中は水温の変化が極めて少ないため、時間がゆっくり流れています。生きた化石といわれているシーラカンスのような生物に遭遇することもしばしばです。海に住んでいる微生物は陸上と同じ種類でも、作り出す物質は全く異なるといったケースも見受けられます。中でも興味深いのは、伊豆諸島新島沖の水深100メートルから採取したカビの一種。カビと聞いて目を丸くするかもしれませんが、このカビから抽出される物質には、強い美白効果があります。じつは美白剤の応用範囲はきわめて広く、化粧品に限りません。
 例えばエビ。エビは捕獲した後、何も処置をしなければ数時間後に黒く変色するため、商品価値が著しく低下します。それをこのカビの作る美白剤が防いでくれるのです。また、りんごを切って放置すると茶色に変色しますが、同様の働きによって防ぐことができます。
 新しい発見に研究者たちは歓喜の声をあげました。ですが、これはほんの序の口です。未来への扉がちょっぴり開いた程度です。広大な海の中には、我々の想像が及ばないほどの有用微生物たちが溢れているはずです。そして発見されるのをじっと待っています。そこから生まれる新たな物質が、我々の生活をさらに向上させてくれるに違いありません。

参考資料
1:エビ・リンゴ
2:ワイン・執筆本

この学問が向いているかも 微生物学

東京海洋大学
海洋生命科学部 海洋生物資源学科 教授
今田 千秋 先生

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先生がめざすSDGs
メッセージ

 本文を読んでいただいて、少しは東京海洋大学に興味を持っていただけましたか? 本学は日本で唯一の海洋系の総合大学です。本学は海の微生物以外にもプランクトンや魚介類、海産哺乳類や海藻などさまざまな海の生き物、海洋環境の諸問題や水産食品などを幅広く学べます。皆さんはこれから志望校を決定されることと存じますが、ぜひ本学もその選択肢の一つに加えていただきたいと思います。

先生の学問へのきっかけ

 これまでたくさんの微生物を海洋から集めてきました。その中には人の生活に使えそうなものもたくさん含まれています。このような微生物を世の中に役立てたいと思ったのが、研究を始めた動機です。今よりもっと安全で、綺麗になれるかもしれない化粧品や、さまざまな病気の治療の特効薬に応用できる微生物を見つけたいと日々情熱を持って研究しています。
 海の微生物の研究は、陸に比べるとはるかに遅れています。これは簡単に外洋や深海には行けないためです。しかし、地球の全表面積の約7割を占める広大な海は、未知の微生物の宝庫です。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

官公庁水産職/高等学校(水産)教員/研究機関技術者/化粧品会社研究員/食品原料製造会社技術者/水族館飼育員など

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今田 千秋 先生がいらっしゃる
東京海洋大学に関心を持ったら

 東京海洋大学は、全国で唯一の海洋にかかわる専門大学です。2大学の統合により新しい学問領域を広げ、海を中心とした最先端の研究を行っています。海洋の活用・保全に係る科学技術の向上に資するため、海洋を巡る理学的・工学的・農学的・社会科学的・人文科学的諸科学を教授するとともに、これらに係わる諸技術の開発に必要な基礎的・応用的教育研究を行うことを理念に掲げています。

※夢ナビ講義はそれぞれの先生の見解にもとづく講義内容としてご理解ください。

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