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ゲノム
講義No.g010562
イヌとヒトとの不思議な共生関係を探る
イヌはヒトに目で訴える
イヌの「交流術」を知るための実験があります。まず、おやつの入った容器のフタをしっかり閉めて、イヌに与えます。イヌは容器のフタを咬んだり前足でひっかいたりしておやつを手に入れようとしますが、自分の力だけではフタが開けられません。さて、イヌはどうするでしょうか?
その結果、多くのイヌが飼い主の方を振りかえったあと、互いに目を合わせたり、顔をじーっとのぞきこんだりする行動をみせました。中には、飼い主に飛びついたり吠えたりしたイヌもいました。まるで「フタを開けて!」といわんばかりに、イヌは目で訴えるのです。
ヒトとの共生が育んだ進化!?
そもそも、動物にとって目を合わせる行為は敵対的な意味をもちます。一方、ヒトは親しい相手と視線で意思疎通することが得意です。イヌは、数万年にも及ぶヒトとの共生の過程で、視線を使った交流術を進化的に獲得したと考えられています。
その証拠に、イヌの祖先のオオカミは、ヒトに育てられたとしても、ヒトと目を合わせることは多くありません。また、柴犬、秋田犬、シベリアンハスキーといったオオカミと遺伝的に近い祖先型犬種は、ヒトとあまり目を合わせません。一方、選抜育種が進んだラブラドールリトリーバーやプードルなどの犬種は、祖先型犬種よりも目で訴える傾向が強いことが示されています。
イヌの「個性」を探る研究も
こうした研究によって、ヒトと交流する方法に犬種差があることがわかってきました。さらに進んで、一匹一匹の個体の違いに注目する研究もあります。最近では、イヌの行動とゲノムの情報を大規模に収集して、両者の相関を調べる取り組みも進んでいます。今後、性格などのイヌの「個性」の遺伝的基盤が解明される日も近いかもしれません。
イヌとヒトは大昔から共存の道を歩んできました。イヌがヒトとの暮らしの中で、どう行動するのか、何を考えているのかを探ることは、ヒトとイヌがさらによい共生関係を築く土台となるに違いありません。