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法学はインターネットをどう考えているか

夢ナビライブ2019名古屋会場にて収録

1分動画1

インターネットとリアル空間の融合

1分動画2

インターネットを規制できるか

1分動画3

忘れられる権利

30分動画

講義を視聴する(30分)

関心ワード
  • フェイクニュース 、
  • 情報リテラシー 、
  • 表現の自由 、
  • 知る権利 、
  • フィルタリング 、
  • スマートフォン 、
  • 憲法 、
  • 法律 、
  • インターネット

講義No.g009445

「知る権利・表現の自由」と「青少年の保護」は両立するか?

現代社会に欠かせないインターネット

 友だちとの連絡や情報収集に、インターネットは便利なツールです。日本でも1990年代後半から広まりました。2010年頃からスマートフォンが爆発的に普及して、私たちの生活は便利になり、経済も発展してきました。

危険を防ぐためのフィルタリング

 携帯電話の普及により、青少年もインターネットを利用できるようになった一方、悪質な被害に遭う事件も急増しました。そのため、日本の政府と通信会社が協力し、インターネットの利便性を守りながら青少年を保護するために「青少年インターネット環境整備法」が制定されました。「フィルタリング」はこの法律を根拠に、携帯端末からインターネットを使うときに、出会い系サイトなどの違法・有害コンテンツへのアクセスを制限する仕組みです。
 この法律が成立した2008年に普及していたガラケーは、契約した電話会社の回線を経由して、インターネットにつながっていました。しかしスマートフォンは無線LAN経由でもつながるために、現在では端末にフィルタリングが実装されています。このように技術の変化に合わせて法律の仕組みも進歩します。

「知る権利・表現の自由」との両立

 憲法21条は「知る権利・表現の自由」を保障しています。自由に発言し、情報に接することは、政治や経済の発展の基礎です。「青少年の保護」と「知る権利・表現の自由」という2つの価値のバランスが大切です。
 本やテレビ番組の制作などでは一定の規律が保たれていますが、インターネット上では誰もが自由に表現できるため、フェイクニュースが出回ることもあります。本来なら間違った情報は誰にも見向きもされずに自然に淘汰(とうた)されますが、それは、受け手側の情報リテラシー(情報を判断し、使いこなす能力)が大前提です。
 また、インターネットはグローバルに広がっています。国による価値観の違いもあり、日本の法律だけでは対応できません。どうやって日本の法律と国際社会を調和させていくかも課題となっています。

参考資料
1:スマートフォンにおけるフィルタリングのかけ方
参考資料
1:フィルタリングの実施方法
関心ワード
  • 個人 、
  • 自律 、
  • 情報 、
  • インターネット 、
  • 尊重 、
  • 人間(人・ヒト・人類) 、
  • 憲法 、
  • 人工知能(AI)

講義No.g009446

AIが個人の尊重を脅かす!?

AIは人間より「正しい」?

 憲法13条に「国民は個人として尊重される」とあります。近代社会は、自分で考えて行動し、その結果に責任を持つ自律した個人から成り立つ社会です。自律した人間同士だからこそ、お互いを尊重し合えます。しかし、AI(人工知能)の普及がこのような社会のあり方を大きく揺さぶるかもしれません。
 AIは膨大なデータを解析し、統計的に最適解を抽出します。ただ、AIがどのようにデータを学習し、なぜこの推論を導き出したのか、人間にはわからないことがあります。AIが人間の知能を超えているとするならば、AIがすべて「正しい」ことになり、人間の判断能力の価値は失墜します。「自律的判断能力がある者同士がお互いを尊重し合う」という、個人からなる社会に大きな疑問が投げかけられることになります。

AIに行動が読まれる

 また、人間が自律的な判断をするといっても、今まで得た情報や意見、経験を基に考えています。それに対してAIは考え方のパターンを読むので、あなたがこの情報を見たらこう判断する、と予測できます。インターネット上の広告の多くも、あなたのブラウザ上での行動を分析して表示されているのです。
 そうした操作された情報に囲まれると、自律的に意思決定したつもりでも、実はAIに左右されているといった事態が起きます。「個人の尊重」や「自律した個人」という人間像にAIは大きな挑戦状を突きつけているのです。

社会全体が豊かになるために

 さらに、AIにより人のスコア化やレベル分けがなされるかもしれません。すると、基になるデータや社会の偏見が拡大して反映される危険性もあります。それを当然に「正しい」ものとして人間の判断に代替させてしまえば、社会は根本的に違ったものになってしまいます。
 これらのことから、AIの研究開発や使用のためのガイドラインを作り、それを社会や研究者が共有して最適な方法を見出さなければなりません。人間の尊厳や個人の尊重を守りながらAIが発展し、社会全体が豊かになっていくことが求められます。

参考資料
1:Society 5.0
この学問が向いているかも 法学、憲法学、情報法学

東京大学
法学部  教授
宍戸 常寿 先生

メッセージ

 今の高校生は、私が高校生の頃よりマルチな能力が求められているようです。学校生活や友だち付き合いをエンジョイし、家族などと仲良くし、勉強も頑張る! でも、すべてそつなくできるのが最良ではありません。好きなものも苦手なものもあり、周りの人と違うことは個性です。
 あなたは今、その個性が芽生えようとしているところです。個性を持った個人として成長していくプロセスにあるために、悩むこともあると思います。どんなところが人と違うのか、自分の個性をしっかりと受け止めて、そこから、自分の道を見つけてください。

先生の学問へのきっかけ

 父親が国会の職員だったので、子どもの頃から政治や法律には関心がありました。理系分野が苦手だったことと、自分の性格を考えると組織に属するのは無理だと思い、一人ひとり独立しているイメージのあった弁護士になろうと思いました。大学では憲法の歴史を学ぶうちに、研究の道が面白くなっていました。最近では表現の自由について勉強し、放送・情報通信の問題について政府の政策決定にも関わっています。情報通信は今や我々の社会そのものです。日々急速に変化する社会を追いかけています。

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宍戸 常寿 先生がいらっしゃる
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 東京大学は、学界の代表的権威を集めた教授陣、多彩をきわめる学部・学科等組織、充実した諸施設、世界的業績などを誇っています。10学部、15の大学院研究科等、11の附置研究所、10の全学センター等で構成されています。「自ら原理に立ち戻って考える力」、「忍耐強く考え続ける力」、「自ら新しい発想を生み出す力」の3つの基礎力を鍛え、「知のプロフェッショナル」が育つ場でありたいと決意しています。