一覧へ戻る

注射器要らず! 皮膚にペタッと貼るワクチン

関心ワード
  • ドラッグデリバリーシステム 、
  • 副作用 、
  • がん(癌) 、
  • 治療 、
  • 薬・医薬品 、
  • 抗がん剤

講義No.g003373

DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)

必要な量の薬を効果的に患部に届ける

 DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)とは、「薬物送達システム」のことで、“必要な量の薬物を、体内の必要な場所に、必要なときに供給する手段”のことです。一般的に内服や注射で投与された薬物は、血液に乗って体内を循環します。そのため患部にだけ作用してほしい薬物が、正常な組織にも拡散してしまい、肝心の患部に届く量はごく一部です。患部に届く薬物量が少ないと効果が得られないために投与量を増やさなければなりませんが、その場合正常な組織に拡散する薬物が増えてしまい副作用の原因となります。DDSは薬物の過剰な投与や副作用を抑え、より安全で、効果的に患部に薬物を運ぶ手段として研究が進められています。

抗がん剤投与に朗報

 DDSの恩恵が大きい薬物のひとつが抗がん剤です。がん細胞の活発な増殖を抑える抗がん剤は、血液中に入って全身を循環するため、髪の毛を作るような健康で活発な細胞にも悪影響を与えます。これが抗がん剤投与によって「髪の毛が抜ける」副作用の原因です。例えるなら現在の抗がん剤治療は、高層ビルの上層階で起きている火事(がん)を消すのに、燃えている所だけに放水するのではなく、ビル全体(体全体)を水浸しにして消火しているようなものなのです。なんとか患部(がん)のみに効果が現れる抗がん剤治療ができないか、というのが患者や医師の長年の望みでしたが、DDSはまさにピンポイントで患部にのみ放水し、消火を可能にしようとするものです。

ジワジワ作戦とミサイル作戦でデリバリー

 DDSには、薬物を一定期間にわたって一定の速度で放出させるシステムや、患部を正しく選んで、ピンポイントに薬物を輸送するターゲッティングシステムなどがあります。一定期間にジワジワ放出させるには、高分子の膜などで薬物を包んで透過量をコントロールする方法があります。狙った場所に的確に輸送するには、患部に集まる性質を持つ物質で作られた膜に薬物を封じ込めて狙い撃ちする方法があり、別名ミサイル療法と呼ばれています。

関心ワード
  • 免疫細胞 、
  • 副作用 、
  • 血液 、
  • 分子 、
  • 免疫 、
  • 細胞 、
  • 抗体 、
  • がん(癌) 、
  • 治療 、
  • 薬・医薬品 、
  • 抗がん剤 、
  • 抗体医薬

講義No.g003374

抗体医薬が、がん治療を変える!

抗体は優れた生体防御システム

 人間は、体内に病原菌などの異物が入ってくると、それに特異的に結合する抗体を自ら作り出します。抗体とは免疫細胞が作るタンパク質の一種で、侵入してきた異物に結合してやっつけます。これが生体に備わっている防御システムで、「免疫」と呼ばれるものです。これまでに体内で作られたさまざまな抗体は、血液中を循環しており、病原菌などの攻撃から生体を守っていますが、この抗体をがん治療に利用する方法が、近年注目されています。

血液中をパトロールしてがん分子を発見

 がん細胞は通常の健康な細胞とは違う分子を持っているので、その分子を特異的に認識する抗体を作ればがん細胞に確実に照準を合わせられます。血液中をぐるぐる循環している抗体ががん細胞のその分子を見つけると、すぐさま結合し、さらにこの抗体にがん細胞を殺傷するはたらきのある免疫細胞が引き寄せられ、がん細胞を攻撃します。いわば抗体は血液中をパトロールする警備員で、怪しい特定の細胞を見つけると逮捕すると同時に、腕に覚えのある免疫細胞をも呼んできて相手をやっつけるというわけです。この仕組みを利用したのが「抗体医薬」と呼ばれるもので、そのいくつかは実用化されています。

ターゲットのがんに確実にヒット

 通常のがん治療では、抗がん剤が血液中に入って全身を循環するので、健康で活発な細胞にも悪影響を与えてしまい、例えば髪の毛が抜けるなどの副作用が現れます。抗体医薬は標的とする悪者の形を見分けてやっつける相手を特異的に特定できること、体の中で効果を発揮する時間が長いこと、副作用を軽減させる可能性があることなどが大きな特長です。「ターゲットの形を自分で見分け、狙ったターゲットにだけ作用する」という抗体医薬の特性は、当たり前のようでいてなかなか実現できなかったため、薬の役割としては大変画期的なのです。副作用の少ないがん治療は、患者さんや治療医の長年にわたる悲願でした。さらに実用化が進めば、がん治療の未来は大きく変わるでしょう。

関心ワード
  • ミサイル療法 、
  • 分子 、
  • 副作用 、
  • タンパク質 、
  • 血管 、
  • 医療 、
  • がん(癌) 、
  • 治療 、
  • 薬・医薬品 、
  • 細胞 、
  • 抗がん剤

講義No.g003396

血管新生を阻害せよ! 注目のがん治療法

がんは自前で血管を作り増殖する

 人間の体の細胞は、血液から酸素や栄養を補給しており、その血液は血管の中を流れています。がん細胞が増殖するためには、多くの酸素や栄養が必要で、そのためには血液が流れる血管が必要です。そこでがんは新しい血管を形成(血管新生)し、周囲の血管から血液を引いてきて、がん細胞の中に酸素や栄養を取り込めるようにします。こうしてがんはどんどん大きくなり、体中に転移を始めます。この血管新生を阻害できれば、がん細胞に栄養が行き渡らないので、いわゆる「兵糧攻め」で、多数のがん細胞を死滅させることができ、治療に役立つと考えられています。

がんの血管新生のメカニズム

 血管の内側は血管内皮細胞で構成されており、この細胞が血管新生のカギを握っています。がん細胞はまず血管内皮細胞の増殖を刺激するタンパク質を分泌します。さらに周囲の結合組織を分解する酵素を出して、増殖した血管内皮細胞をがん組織の方へ導き、新しい血管を作っていきます。つまりがん細胞は血管新生のためにさまざまな指令物質を作り出し、周囲の血管がその指令を受け止めているというわけです。ですから血管新生を阻害する薬剤には、「がん細胞が指令物質を作れなくする作用」か、「周囲の血管が持っている、指令を受け取るセンサーを効かなくさせる作用」のいずれかを持たせればいいことになります。

ミサイル療法で血管内皮細胞だけを破壊

 しかしこの方法論では、すでにできてしまった血管への効力は弱いと考えられます。近年の研究で、がんが作った血管の内皮細胞には、目印となるマーカータンパク質が存在することが明らかとなりました。それらをターゲットにして、がんの血管内皮細胞のみを破壊する薬を、狙いを定めたミサイルのように届けられれば、副作用が少なく効果的に血管新生を阻害できると期待されています。このように特定の分子およびその分子がある組織を目がけて薬剤を届ける療法は「ミサイル療法」と呼ばれ、患部だけを狙い打ちできる治療法として注目されています。

この学問が向いているかも 薬学

大阪大学
薬学部  教授
中川 晋作 先生

メッセージ

 研究=知識ではありません。大学に入学するには最低限の知識が必要ですが、重要なのは知識をどれだけ持っているかではなく、生きていく上でどう知識を使いこなせるかです。薬学の研究も同じで、どうしたら患者さんに副作用が起こることなく治療できるか、ひとつの治療法がダメならどこをどう改善すればいいのか、などの攻め方を持てる知識を駆使して考えていくことが大切です。大学では“研究”を題材にして科学的論理思考に基づいた総合判断力を身につけてほしいと思っています。

大学アイコン
中川 晋作 先生がいらっしゃる
大阪大学に関心を持ったら

 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。