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歯を支える歯ぐきと骨を再生する

関心ワード
  • 骨 、
  • 歯ぐき 、
  • 歯 、
  • iPS細胞 、
  • ステムセル(幹細胞) 、
  • 細菌・バクテリア 、
  • 歯学 、
  • 歯周病

講義No.g009791

歯ぐきや骨を薬で再生! ~世界初の歯周組織再生技術~

一度失った歯ぐきや骨は自分では取り戻せない

 歯周病とは、口の中の細菌によって歯ぐきが炎症を起こす病気です。進行すると歯ぐきや歯を支える骨が破壊されてしまいます。細菌を取り除くことで病気の進行は止まりますが、失われた歯ぐきや骨を自分の力で取り戻すことはできません。そのため、最悪の場合は歯を失うことになります。しかし、それでも歯ぐきや骨といった歯周組織を作る元となる細胞である幹細胞は残っています。そこで、なんらかの方法で幹細胞の働きを活性化することができれば、元の状態を取り戻すことができます。

歯周組織を再生させる薬

 歯と骨の間にはコラーゲンの線維層があります。これを歯根膜といいますが、幹細胞はここに眠っています。例えば、歯の並びをきれいにする矯正治療というものがあります。この治療では歯を倒したり、引っ張ったりしますが、この過程で倒された側の歯根膜は骨を吸収し、引っ張られた側は骨を作ります。ここで働いているのが、骨の形成や吸収に関わる細胞です。人為的にこのような細胞をもっと活性化できれば、歯周組織が再生されるはずです。実は、このような薬はすでに開発されており、治療に使われています。この薬(成長因子)は、幹細胞を活性化して幹細胞を増やし、新しい血管を作り組織の再生を促す機能があります。ですからこの薬を患部に投与すれば、元の歯周組織を再生させることができるわけです。

人々のQOLを高める歯学研究

 再生治療というとiPS細胞による治療が知られていますが、薬で組織を再生させるのは世界初の研究成果です。研究はさらに進んでいて、幹細胞が乏しい人のために、骨髄や脂肪組織の中にある幹細胞を抽出して患部に移植する治療技術が研究されています。
 歯の再生治療の発達によって、入れ歯やインプラントなどの治療を行わなくても、自分の歯で生活できるようになるでしょう。高齢化が進む中で、人のQOL(生活の質)を高めることは重要なテーマです。その意味で歯学研究は重要な役割を果たしています。

この学問が向いているかも 歯周病学、歯学、再生医学

大阪大学
歯学部 口腔治療学教室 教授
村上 伸也 先生

先生がめざすSDGs
メッセージ

 私は、歯周病学という学問を専門的に研究しています。歯学と聞くと、削ったり詰めたりして虫歯の治療をするというイメージを持っていると思います。しかし、今の歯学では、もっと幅広く、体の反応を理解し、それを診断や治療に応用するという臨床研究を行い、近未来の歯科医療を変えようとしています。もしあなたが医療に携わることに興味があるなら、ぜひ歯学もその対象に加えてください。

先生の学問へのきっかけ

 何か資格を取りたいと思い歯学部に進みました。歯科医というと、歯を削ったり詰めたりするというイメージを持っている人が多いでしょう。これは、材料に依存した治療と思われているからです。もちろん、材料の発達にともない歯科医療は進歩してきたのですが、そこに生物学的な治療が加われば、歯科の治療はもっと魅力的になると考えていました。そのチャンスを与えてくれたのが、歯周病学でした。歯周病は感染症であり、その治療には体の反応にも向き合う必要があり、再生治療の研究も進んでいて、歯科医療の新しい可能性を感じました。

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村上 伸也 先生がいらっしゃる
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 自由な学風と進取の精神が伝統である大阪大学は、学術研究でも生命科学をはじめ各分野で多くの研究者が世界を舞台に活躍、阪大の名を高めています。その理由は、モットーである「地域に生き世界に伸びる」を忠実に実践してきたからです。阪大の特色は、この理念に全てが集約されています。また、大阪大学は、常に発展し続ける大学です。新たな試みに果敢に挑戦し、異質なものを迎え入れ、脱皮を繰り返すみずみずしい息吹がキャンパスに満ち溢れています。