-
下水道
、
-
東南アジア
、
-
SDGs(持続可能な開発目標)
、
-
水環境
、
-
トイレ
、
-
飲み水
、
-
水
講義No.g009377
世界に安全な水とトイレを普及させる水環境研究のあり方
世界の3割の人はトイレがない生活
日本では、上下水道が整備され、水洗トイレが普及し、蛇口から出る水を安心して飲めます。しかし、アフリカや西アジア、東南アジアなどを中心に、世界人口の3割にあたる人々がトイレのない生活をしています。国連加盟国が2030年までに達成するために掲げた目標「SDGs(サステナブルディベロップメントゴールズ、持続可能な開発目標)」にも、「安全な水とトイレを世界中に」という項目があり、飲み水やトイレといった水環境に関する研究が、世界中で盛んに行われるようになりました。
水洗トイレの普及が答えではない
自然災害の際、日本ではトイレの水不足が問題になりますが、わずか半世紀余り前はほとんどのトイレで水は必要品ではありませんでした。さらにその半世紀前は、都市部であっても糞尿(ふんにょう)はストックされ、「金肥(きんぴ)」として農家に売られていました。
水洗トイレを1回流すためには、6Lほどの水が必要ですが、気候変動の影響や、乾期の存在により、世界にはそもそも十分な水が得られない国や地域が多くあります。また、水で流さず、糞と水分(尿)を分離して貯蔵する「し尿分離」型のトイレもあり、臭いを抑え、良質の肥料を作る方法として現在もベトナムなどで使われています。
世界の多様性に合わせた解決のために
経済発展が著しい東南アジアでは、都市部を中心に水洗トイレが普及しています。ただ、下水処理のインフラが整う前に水洗式のトイレが普及したことから、し尿が不十分な処理のまま環境に流れている地域が多いのが実情です。また、ネパールのカトマンズは深刻な水不足状態ですが、雨水は汚れていると考える人が多く、貴重な水資源でありながら活用されていないという問題もあります。国や地域によって環境は異なり、トイレや水に関する考え方もそれぞれ異なっているのです。
これからの水環境を研究するためには、現地の実情をよく観察し、そこに住む人たちの考え方に照らして、最適なシステムを導入することが一層求められるでしょう。