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寿命
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模型(モデル)
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事故
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風洞実験
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振動
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台風
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風
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つり橋
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橋
講義No.g004456
風が吹くと橋はどうなる? 風と揺れとの闘い
それは吊橋が落ちたことから始まった
地域を結ぶ大事な役割を担っている橋は、陸上の目印となるランドマークとしての意味も備えています。その巨大な橋が落下するなどとは、想像もできないことでしょう。しかし1940年、アメリカ・ワシントン州の「タコマ・ナロウズ吊橋」は、完成からわずか4カ月で落下してしまいました。タコマ・ナロウズ吊橋は当時世界第3位の長さ853mで、60m/sの風速にも耐えられるように設計されていましたが、わずか風速19m/sで落ちてしまったのです。原因は風が「ねじれ振動」を生み出したことでした。この事故が起こるまで、橋が風によって振動することは知られていなかったのです。このような悲劇を繰り返さないために、橋梁の科学である「耐風工学」が始まりました。
橋の揺れを科学する風洞実験
耐風対策に必要なことは、風と揺れのパターンを知ることです。風が吹くと時間の経過によって、橋には縦や横、ねじれの振動が生まれます。すると橋の中央が揺れたり、橋の端が揺れたりするのです。これらの揺れと振動が生み出す力を把握するために、風洞の中に橋梁の模型を作り人工的に風を起こして実験を行います。そうして揺れを抑えるための対策を考えるのです。例えばある橋は、風洞実験の結果、風速10m/sを越えると振動が大きくなることがわかりました。このため、振動を抑制する装置を搭載するなどの対策を行っています。
橋の長寿命化も課題
橋は架けられる場所の地形や、形、高さなどによって、それぞれ受ける風の影響が異なります。つまり安全な橋を作るためには、橋ごとに固有の技術力が求められるのです。さらに課題があります。橋の寿命は、潮風などによる塩害や車両の通行状況などにもよりますが、通常50~80年であり、橋の寿命を延ばすための修繕も必要なのです。耐風工学では安全性とコスト面を考慮し、台風などにも負けない橋を作る技術を研究しています。