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日本語
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言語
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言語学
講義No.g008341
言語が違うと、ものの見方や感じ方が異なるのはなぜ?
世界には日本語にはない考え方の言語がある
世界には7000もの言語があると言われています。その中には日本語にはない考え方を持つ言語もたくさんあります。例えば、日本語ではものを指し示す時「あれ」「それ」「これ」の3つに分けますが、エスキモーのある言語では「あれ」をさらに「視線の上にあるもの」「視線上にあるもの」「下にあるもの」に、また静止しているか動いているかも区別すると言われています。それだけでなく、対象が隠れているかどうか、つまり、見えているかどうかまでも区別して指示代名詞を使い分けるのです。
文化や習慣が言語に反映される
なぜこんな複雑な指示代名詞が存在するのでしょうか。それにはエスキモーの文化や習慣が関係しています。言語にはそれを使う人々の文化や習慣が深く関わっているのです。しかも、これは単に表現の仕方が違うといった表面的なことでなく、使用している言語によって世界のとらえ方が異なっていることを示しているのです。
子どもは母語を身につける中で、その言語に受け継がれたものの見方や感じ方を身につけるので、彼らは世界をそのような形で見るようになります。大人になって外国語の習得が難しいのは、ものの見方や感じ方が母語によってある程度固定化されるからなのです。
言語化に関わる原理を突き止める
では、文化や習慣はどのようにして言語化されるのでしょうか。何も知らない子どもが複雑な言語を習得することを考えると、そこには何か単純な原理があると考えるのが自然です。例えば、日本語では「時間が流れる」と言います。実際には時間は流れているわけではありませんが、川の水のように流れると認識するのです。これは「メタファー(隠喩)」ですが、このような人間が生まれながらに持っている共通原理がいくつかあって、それらを個々の文化の中で使うことで言語が形成されます。ただし、それは無意識に行われるため、なぜそうなったのかを説明することは容易ではありません。それを突き止めるのが言語学者の役割の一つです。