-
KAGRA(大型低温重力波望遠鏡)
、
-
ブラックホール
、
-
光
、
-
重力波
、
-
アインシュタイン
、
-
相対性理論
、
-
天文学
、
-
天体
講義No.g008563
「重力波」の観測をめざす「KAGRA」プロジェクト
一般相対性理論で確かめられていなかったこと
1915年にアインシュタインが発表した一般相対性理論で予言されながら確かめられなかったことがありました。それは「重力波」です。一般相対性理論では、重い物体が空間をゆがめ、このゆがみこそが重力だと考えます。この考えを一歩進めて、もし重い物体が激しく運動すると、空間のゆがみも激しく変化し、それが空間を光の速度で伝わります。これが「重力波」です。
「KAGRA」プロジェクトのめざすもの
「中性子星」や「ブラックホール」という、非常に重くて小さい天体が出す重力波による地球上での空間のゆがみは1メートルあたりおおよそ10の-23乗メートルと、ものすごく小さいのです。この重力波による空間の伸び縮みを測定し、重力波の存在を確認しようというのが「KAGRA(かぐら)」プロジェクトです。
KAGRAでは、レーザーの光をハーフミラーで透過光と反射光に分け、それぞれの光が飛んでいく先に鏡を置いて反射させて元のハーフミラーに戻し、そこでお互いの光を「干渉」させる「レーザー干渉計」技術を用いて、重力波の影響による空間の伸び縮みを測定します。重力波の影響を受けて変化する距離が光の波長(KAGRAの場合、約1ミクロン)以下であっても、それを知ることができるのです。装置を設置すると地面が常にわずかに揺れているので、地面振動の小さい岐阜県飛騨市の地下に設置し、加えて非常に高性能な防振装置も使われます。そして光を反射する鏡ですが、室温で使うと熱運動で表面が微妙に揺れるので、鏡を約-253度の極低温にして熱運動を抑えます。
重力波を観測することの意味
2015年9月に、アメリカを中心とする研究チームが、世界で初めて重力波を直接観測することに成功しました。今後、アメリカから遠く離れた場所にあるKAGRAでも重力波を観測することができれば、初めて重力波が来た方向を精度よく測ることができます。これは「重力波天文学」という新しい天文学を誕生させることにつながっていくと期待されています。