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大阪大学の教員によるミニ講義

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がん細胞の「弱み」も見つけるケミカルバイオロジー研究

化学的な視点から生命現象を理解・解明

 薬学の世界では、植物や微生物の代謝産物から、医薬品やそのもとになる化合物を見つけ出す創薬研究が長年行われています。これに加わる新たな流れとして、発見した化合物を「生命機能を制御する『生体機能分子』である」ととらえ、その機能を解明する「ケミカルバイオロジー」の視点からの研究が進んでいます。
 例えば、がん細胞を撃退する化合物の場合、がん細胞中のタンパク質がこの化合物と結合することで機能が失われるということです。つまり、発想を変えると、そのタンパク質を突き詰めれば、薬を届けるべきがん細胞の「弱み」を見つけることができるはずです。

タンパク質を釣り上げる?

 化合物が、がん細胞の中のどのタンパク質に結合するかを見つける第一歩は、化合物をエサにした「釣り」のようなものと言えます。がん細胞のタンパク質溶液に、ひも状構造(釣り糸)を付加した化合物を入れ、それにくっつくタンパク質を釣り上げ、そのタンパク質が何かを特定するのです。
 次に、それが実際にがんの「弱み」となるかどうかを調べるためには、分子生物学や細胞生物学、遺伝子工学などの技術を使った実験や分析が行われます。化学を基盤に、複数の領域の学問の考え方や手法を使って進められるのも、ケミカルバイオロジーの大きな特徴です。

海洋天然物に集まる注目~海底に宝が!~

 近年注目されているのが、海の底で生息するナマコやホヤ、軟体サンゴ、海綿動物などの底生生物や、それらに共生する微生物などが創り出す海洋天然物です。海洋生物や海洋微生物は、「光が届かない」「高い水圧にさらされる」など、特殊な環境で生きているため、陸生の植物や微生物とはまったく違う代謝経路を持ち、そこで創られる化合物も複雑で多様な構造をしています。それは、いろいろなタンパク質に選択的に結合できる可能性を秘めているということで、ケミカルバイオロジーでは、魅力的なツールとして盛んに研究が進められているのです。

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この学問が向いているかも 天然物創薬学、ケミカルバイオロジー


薬学部  教授
荒井 雅吉

メッセージ

 私の現在の専門は、天然物創薬学、ケミカルバイオロジーですが、初めから「この分野の研究がしたい」と決めていたわけではありません。その時には関係ないように見えても興味を持った分野の勉強をしたり、関連する論文を読んだりした積み重ねが、今の研究につながったのです。それは、化学だけでなく、コミュニケーションの仕方や、異文化への興味など多岐にわたります。あなたも、ぜひいろいろなことに興味を持ってください。それが意外と後になって役に立つのです。

先生の学問へのきっかけ

 父親が製薬会社に勤めていた関係もあり、子どもの頃からすでに「医療や薬に関わることができるといいな」という気持ちがありました。大学に入ってからは、このまま大学で薬をつくる研究をしたいと思い、大学院で学んだ後、天然物を扱う研究所で化合物を見つけて薬づくりにつなげる研究を始めました。
 その一方で、実は、化合物が病原微生物やガン細胞を殺すとういう作用メカニズムにもとても興味があり、密かに勉強を続けていたのです。それらすべてが重なり、現在の「ケミカルバイオロジー」の研究へとつながってきたのだと思います。

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