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大阪大学の教員によるミニ講義

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薬として復活したサリドマイドの化学的な秘密

安全なはずの薬が引き起こした悲劇

 1960年頃に、日本で「サリドマイド事件」が起こりました。睡眠薬のサリドマイドを服用した妊婦から、四肢や耳に先天的な障がいのある赤ちゃんが生まれたのです。このためサリドマイドは長い間、使用が禁止されていましたが、1998年にアメリカでハンセン病の薬として認可されました。ほかにも現在では、抗がん剤やエイズの治療薬として使われています。しかし今も妊婦にサリドマイドが処方されることはありません。サリドマイドは役に立つ薬になる一方で、危険な側面もあわせ持っているのです。どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。

右手型と左手型

 サリドマイドになる化合物には、同じ分子構造をしているけれども、その形が鏡に映った像のように異なる二つのタイプがあるのです。例えるなら、手のひら同士をぴったりと合わせることができる右手と左手の関係と同じです。このような関係は、「鏡像異性体」と呼ばれます。実は、サリドマイドを化学的に合成すると、通常は右手型と左手型が一対ずつできるのです。右手型には睡眠導入効果があり、左手型には胎児の発育によくない作用がありました。
 鏡像異性体を持つ化合物はほかにもたくさんあり、うま味成分として知られるグルタミン酸も、うま味があるのは左手型だけであることがわかっています。

ほしい型だけを作る「不斉合成」

 今では鏡像異性体を持つ化合物を薬とする場合には、必ず右手型と左手型の作用を調べることがルールになっています。どちらかに薬としての効果があっても、片方に毒性があれば薬として認められることはありません。
 またこの一方で、人工的に鏡像異性体の片方だけを作り出す研究も進んでいます。これは「不斉合成(ふせいごうせい)」と呼ばれており、右手型、左手型のどちらか一つ、必要な方だけを作ります。具体的には、微生物や酵素などの天然物を利用して合成する方法と、人為的に作り出した触媒を使う方法があります。

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この学問が向いているかも 有機合成化学


薬学部  教授
藤岡 弘道

メッセージ

 「一芸に秀でるものは多芸に通ず」という諺が示すように、何か一つのことを極めれば、その応用力は大きく広がります。ぜひ一度、自分で何かテーマを設定し、背景について情報を集めて、自分なりの考えをまとめてみてください。こうした訓練が知恵を育むのです。知恵とは、手持ちの知識を組み合わせて、物事に対処する力です。大学での学びは、知識を集めることではなく知恵を磨くことです。自分で限界を決めず、いろいろな対象に関心を持ち、知恵を磨くトレーニングを心がけてほしいと思います。

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