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講義No.08764

「文学」は、時代を超えて心を揺さぶるもの

「コミュニケーション言語」と「文学の言葉」

 芸術にもなりうる文学や文化に関わる人間の営みは、すべて「言語」からはじまります。私たちが日常生活で使っている言葉は、意思を伝え合うためのコミュニケーション言語であって、互いに理解し合うことが一番の目的です。しかし文学の言葉は、コミュニケーション言語とは異なり、わかりづらいというところにポイントがあります。なぜなら、わかりづらいと人間はそこで立ち止まって考えるからです。

最小の文学「ヴィッツ」

 ドイツの文学の最小単位の一つに「ヴィッツ」というものがあります。これは小説よりも短い文章で、なおかつ時代を超えて読めるジョークのようなものです。その一例を紹介しましょう。
 「ミンナ、このクモの巣はどこから来たんだい?」「きっとクモからですよ、奥さま」
 これは奥さまと、ミンナという家政婦とのやりとりです。奥さまは家政婦に、ちゃんとそうじしないからクモの巣が張っているのだと指摘し、家政婦の怠慢をとがめようとしています。家政婦の「すみません」という返事を期待しているのです。しかし家政婦は無意味な答えを返すことで、奥さまが本当に聞きたかった回答を回避し、その非難をかわしています。これは現在の漫才やお笑いにも通じる、文学的な効果です。

文学は時代を超える

 文学は時代の産物だという側面もありますが、このように人間に関わる文化の一形態として、普遍的な人間を追究するという側面もあります。優れた文学作品というのは時を超えて、人間そのものの性質を伝え、コンピュータ時代の私たちの心をも揺さぶるような力があるのです。ドイツ文学研究者の小岸昭は著作『マラーノの系譜』の序文で、「文学は、ある意味では勝利者の手によってつくられてゆく歴史への反逆である」と書いています。
 ドイツ語は歴史も物語も同じ「Geschichte」という単語を使って表しますが、一つしかない歴史に対して、歴史では語られないいくつもの物語があるということがいえるでしょう。

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この学問が向いているかも 人文社会学、ドイツ文学

首都大学東京
人文社会学部 人文学科 教授
園田 みどり 先生

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メッセージ

 18世紀の哲学者カントは『啓蒙とは何か』という著作の中で、「自分の頭で考えることができない未熟な状態を脱しなさい」と呼びかけています。これは今のあなたには、「インターネット上の怪しげな情報などに惑わされず、書物や新聞から得られた知識をもとに、時間をかけて考え批判する勇気を持ちなさい」という教えになるでしょう。スマートフォンを、時々は文庫本に持ちかえてみましょう。
 人間にはさまざまな生き方があって、可能性は無限にあるのだと気づかせてくれます。そして何よりも、生き続ける勇気を与えてくれるでしょう。

先生の学問へのきっかけ

 小さい頃母にシューベルトの子守歌をドイツ語で聴かせてもらったり、ウィーン少年合唱団の音楽映画を見たりして、ドイツの文化は身近で親しみがありました。ドイツ語への興味から、やがていつしか小説や詩にも強く惹かれるようになりました。
 もともと音楽がきっかけでしたが、実際にドイツへ行ってみると絵画やほかのパフォーマンス芸術に衝撃を受けました。日本にいるのと現地で目にするものは全然異なります。空気や気候も違えば、人々の話す言葉も表情も違うのです。それはどれもドイツの文化を勉強しなければわからなかったことでした。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

物流欧州派遣/SEソフトウェア開発/官公庁文化・教育/出版社編集

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 首都大学東京は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

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