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講義No.08729

熱帯のショウジョウバエが日本に分布拡大、遺伝子に変化はあるのか?

ゲノム・遺伝子から生物進化を探る「進化遺伝学」

 人間は大昔から今の姿であったわけではなく、長い時間の中でだんだん変化してきました。生き物の個々の性質や形を決めているのは遺伝子で、すべての遺伝子を合わせて「ゲノム」と言います。
 生物の進化を理解するには、さまざまなアプローチがありますが、遺伝子やゲノムがどのように変わってきたかによって、生物がどのように進化したかを遺伝的側面から解析する学問を「進化遺伝学」と呼びます。ゲノムは「生物の設計図」なので、その設計図の変化から生物の進化を明らかにするのです。

寒さに強いアカショウジョウバエ

 ショウジョウバエは、普段の生活でよく目にする生物ですが、日本には形や大きさ、色、模様などさまざまな特徴によって300種近い種が記載されています。その中で、アカショウジョウバエはもともと東南アジアの熱帯に生息していた種ですが、1980年代中頃、関西で生息が確認され、今では名古屋市内でも普通に見ることができます。
 日本は熱帯と比べて気温が低いので、アカショウジョウバエが生息できるようになった背景には、低温に強くなるための何らかの遺伝的変化があったものと考えられます。実際に熱帯地域と日本で採集したアカショウジョウバエの低温耐性を比べると、明らかに日本産の方が寒さに強いという結果が出ています。

遺伝子に何が起きているのか?

 アカショウジョウバエは、1978年の調査では九州以北では全く見つかっていないので、わずか10年ほどの間に生息域を拡大したことになります。生物の進化は長い時間をかけてゆっくり変化していく、というのが一般的ですが、わずか数年のうちに変化が見られることもあるのです。
 生物が突然、分布を一気に広げる現象はときどき見られ、例えば、日本でも発見され大きなニュースとなったヒアリも、アメリカではどんどん生息地域を北上させました。このような速いスピードで進化が起きる現象に注目し、進化の原因となっている遺伝子やゲノムの変化を突き止めるのも進化遺伝学の研究の一つです。

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この学問が向いているかも 進化遺伝学、ゲノム進化学

首都大学東京
理学部 生命科学科 ※2018年4月設置 教授
田村 浩一郎 先生

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メッセージ

 「この学部なら就職に有利」だからといった考えで進路を決めても、残念ながら学問や研究は成就しないでしょう。そうではなく、自分は何に興味があるのか、何をやりたいのか、何に向いているのか、自問自答を繰り返して、進学先を決めてほしいと思います。自分自身の意思で選択し取り組んだことは、一生の糧になります。
 学生時代は何を始めるにも適した時期です。私自身も大学時代に出合った研究が、その後の人生を決めてくれました。あなたも、ぜひ若いうちに自分のやりたいことを見つけ、目標に向かって邁進(まいしん)してください。

先生の学問へのきっかけ

 高校生の頃まで、理系で日本人がノーベル賞を受賞したのは物理と化学だけだったので、生物学なら未開拓の研究分野がたくさん残っていると考えて生物学科を選びました。卒業研究の頃、ちょうどパソコンが普及し始めたので、その時期に自然にプログラミングを習得できたのは幸運でした。当時から、将来は生物学にも必ず、コンピュータを使った計算技術が必要になると感じていました。
 その勘が当たり、今では「バイオインフォマティクス」という生物学と情報学を合わせた学問分野ができ、そこでの研究に専門的に取り組んでいます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

研究職(大学院博士課程卒業者)、システムエンジニア(大学院修士課程卒業者)

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田村 浩一郎 先生がいらっしゃる
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 首都大学東京は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

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