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講義No.08723

スリランカの認知症高齢者はなぜ地域で暮らすことができるのか?

スリランカの高齢者事情

 2004年のスマトラ島沖地震で、スリランカは津波で大きな被害を受けました。津波によって心的被害を受けたことが、将来的に認知症の発症に影響を及ぼすのではないかということで、2006年からスリランカで調査が行われました。
 調査でわかったことは、「被災した高齢者が心的外傷を負っていること」「調査した時点で日本と同じくらいの割合で認知症の疑いのある人がいる」ということでした。しかし、この結果は統計学的な数値です。数字で表された集団の「傾向」と、実際の住民の「暮らし」は大きくかけ離れています。それは、この調査中に、現地で認知症と思われる人とほとんど出会わなかったからです。

日本と異なる生活のあり方

 では、スリランカの認知症高齢者は、地域でどのように暮らしているのでしょうか? 認知症の人を見かけないというだけで、「いない」と断言することはできません。スリランカは信仰心があつく、高齢者を敬ったり、みんなでケアすることが当たり前だと考えます。老人ホームのような施設はありますが、入所するのはごく一部の人で、地域の中で高齢者が孤立せず、暮らしていける何らかの仕組みがあるのかもしれません。こうした暮らしが認知症の発生を抑えたり、あるいは認知症になったとしても不安なく生活していけることにつながっているとも考えられます。

文化と医療の違いを探る「医療人類学」

 こうした環境と病気の関連性については、今後の詳しい研究を待つ必要がありますが、そこで得た知見が、将来的に日本の医療や看護を見直すきっかけになりえます。ただ、スリランカのやり方をそのまま日本に当てはめることはできません。スリランカと日本では、生活様式も家族形態も違っているからです。
 しかし、その差異を踏まえたうえで、日本の高齢者医療に役立つことがあるはずです。そのためには、スリランカと日本の文化の違い、そして医療に関する考え方の違いをきちんと把握することが必要になります。そういったことを探究していくのが、「医療人類学」という学問です。

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この学問が向いているかも 文化人類学、医療人類学

首都大学東京
健康福祉学部 看護学科 准教授
野村 亜由美 先生

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メッセージ

 高校生から「どんな勉強をしたらいいですか」と聞かれることがあります。私は2つの力を養うことをお勧めしています。1つめは「問いを立てる力」です。問いを立てるとは、時代に流されずあたり前を疑うということです。そしてもう1つは「生き抜く力」です。自分が困ったとき、誰に聞けばわかるのか?という社会性を身につけることです。時間がかかってもよいので、自分が「なんだろう?」と思ったことについては、とことん追求、探究してください。これは大学生として学ぶ姿勢であり、看護の基本である「人間理解」にもつながります。

先生の学問へのきっかけ

 脳神経外科で働いていた頃、脳疾患の後遺症で認知機能が低下した男性に出会いました。ある日その方と立ち話をしていると、彼がずっと私の足を踏んでいたので、冗談交じりに「足を踏んでますよ」と伝えました。するとその男性は「俺の足の下に足を入れるな!」と怒ったのです。私は、そういう考え方もあるのかと素直に驚きました。そのとき以来、私は考え方の多様性や「人間」について知りたいと考え、医療人類学という学問をとおして認知症の研究に取り組むようになりました。高齢者の生きる姿は、「生きるとはなにか」を教えてくれます。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

青年海外協力隊の看護師/保健医療分野のNGO団体職員/看護系大学教員

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野村 亜由美 先生がいらっしゃる
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 首都大学東京は「大都市における人間社会の理想像の追求」を使命とし、東京都が設置している公立の総合大学です。人文社会学部、法学部、経済経営学部、理学部、都市環境学部、システムデザイン学部、健康福祉学部の7学部23学科で広範な学問領域を網羅。学部、領域を越え自由に学ぶカリキュラムやインターンシップなどの特色あるプログラムや、各分野の高度な専門教育が、充実した環境の中で受けられます。

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