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講義No.08387

「摩擦」を制するものは、世界を制す!

摩擦の力が大きいミクロの世界

 机をなでると、「ザラザラ」「ツルツル」といった感覚があるのは、手と机の間に摩擦が生じているからです。人間は無意識のうちに摩擦と共に生き、巨石や木材を運ぶため地面との間に生じる摩擦と戦ってきました。
 私たちの日常では物体に働く重力の影響が支配的ですが、原子・分子のミクロの世界では、物体の質量が極めて小さくなるため、摩擦力の影響が重力よりも圧倒的に大きくなります。一辺1ナノメートル(10億分の1メートル)の立方体に働く摩擦の影響は、一辺1センチの立方体と比較すると1千万倍にも及びます。このナノスケールの世界の摩擦を研究するのが「ナノトライボロジー」です。

炭素のボールで「超潤滑」を実現

 摩擦を小さくする仕組みの一つに「分子ベアリング」があります。床の上にビー玉を並べて板を乗せた構造です。炭素原子60個を球状につなげたフラーレン(C60)をビー玉とし、グラファイト(黒鉛)を床と板にすると、摩擦係数が限りなくゼロに近づく超潤滑材料になります。これはスキーのワックスにも使えますが、フラーレンが高コスト材料のため、長期間精密な動きを求められる部分に少量だけ使うのが現実的です。例えば分散めっき剤に使って微小な金属部品の表面をコーティングする用途が考えられます。

摩擦をめぐる開発競争の幕開け

 機械製品が壊れる原因の多くは亀裂による破壊や摩耗によるもので、部品交換のコスト、故障の放置に由来する波及損失、エネルギー消費を合計すると、日本全体では年間十数兆円の経済損失になります。これは国民総生産の数%に相当します。アメリカはこの摩擦による損失にいち早く気づき、国家レベルで摩擦のデータを集め、宇宙開発計画などに生かしてきました。
 近年、加工業や自動車産業はコストカット競争の真っ只中にありますが、もはや劇的に部品の性能を上げることは困難です。そこでさらに安くてよい製品を作るため、個々の部品間の摩擦を低減する試みに注目が集まっています。摩擦をめぐる開発競争は既に始まっているのです。

参考資料
1:研究室紹介 ナノの世界の摩擦を見る・制御する

ゼロ摩擦への挑戦~究極の省エネをめざす

夢ナビライブ2017 東京会場

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小さくても大きくても起きる摩擦の世界

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ナノテクノロジーの発展と課題

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炭素素材で摩擦をゼロに

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講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも ナノサイエンス、トライボロジー、表面科学

電気通信大学
情報理工学域 Ⅲ類(理工系)物理工学プログラム 教授
佐々木 成朗 先生

先生の著書
メッセージ

 2つの物体をくっつけてこすると、必ず境界面に「摩擦」が発生します。ですから摩擦の研究は物理の分野に属しながら、あらゆる分野に通じているとも言えます。
 例えば、人間の血流と血管壁の間に起こる摩擦を考えると、医学や薬学では思いもよらなかった、動脈瘤(りゅう)や脳梗塞(こうそく)、脳卒中のような病気の新しい治療法につながるかもしれません。摩擦の研究の歴史は浅く、特にミクロの世界の摩擦の科学「ナノトライボロジー」は未知の塊です。教科書を新しい法則で書き換えることにチャレンジしたい人は、ぜひ志してください。

先生の学問へのきっかけ

 子どもの頃、昆虫が好きで、生物学とは違うアプローチで生き物の本質に迫れないかと考え、大学では物理学を選択しました。当時はちょうど「ナノテクノロジー」の研究が始まった頃であり、また世界で初めて摩擦が原子レベルで測定されたことから、ナノテクノロジーと摩擦を絡めて、「原子レベルから摩擦のメカニズムを解き明かす」という研究テーマに行きついたのです。
 振り返ってみるとその選択は、細部まで精巧に作られた昆虫の魅力と何か相通じるものを、ミクロの世界に見出したのが理由かもしれません。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

機械メーカー自動車開発/機械メーカーベアリング開発/電子機器メーカー研究開発/半導体メーカー研究開発/情報・通信コンサルタント/情報・通信SE/金融SE/印刷開発/医療機器営業/食品営業/中高教員/大学研究員

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佐々木 成朗 先生がいらっしゃる
電気通信大学に関心を持ったら

 電気通信大学は、日本初の電気通信単科大学として無線技術者の養成はもとより、電気通信科学のあらゆる分野にわたって古くから研究者や技術者を送り出してきました。先端科学技術を支える全分野を網羅し、電子・情報分野に特化した研究、教育を行うユニークな大学です。社会に信頼され、社会から頼りにされる大学を目指し、ものづくりに意欲を燃やす学徒の期待に応える教育環境を提供します。

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