夢ナビ夢ナビは、さまざまな言葉をデータベースから検索・閲覧し、将来の進路を決める“きっかけ”を提供します。

講義No.06303

音の錯覚の不思議~音と時間感覚のズレはなぜ起こるのか~

音の錯覚とは

 音は、危険を察知するなど生物が生きるための重要な情報のひとつです。音には強弱や高さ、音色、位置などさまざまな情報が含まれていて、私たちはそれを脳で処理しています。脳の情報処理が現実とズレることで起こる「錯覚」は、聴覚にも存在します。これを「錯聴(さくちょう)」と言います。代表的なものに、音階が無限に高くなり続けるように感じられる「無限音階」などがあります。

音が1つ増えるだけで錯聴が起きる

 コンピュータで合成したアラーム音のような短い音を聞かせる実験を紹介しましょう。
 私たちは、音をいくつかのまとまりとして聞き分けています。音を秩序づける要因のひとつは「リズム」です。1つの音を●で表すと考えてください。「●● ●」というリズムで3つの音を聞かせたとき、2つ目と3つ目の音の間隔は、どれくらいの長さに感じられたのかを調べました。すると、「● ●」と2つの音を聞かせたときの時間感覚より、「●● ●」と3つの音を聞かせたときの方が、2つ目と3つ目の音の間隔は短く感じられたのです。物理的な時間と主観的に感じる時間の長さに食い違いが起きたというわけです。この錯聴は、「時間縮小錯覚」と名付けられています。

日常的に錯聴は起きている?

 ところが、音のリズムを「● ●●」とした場合には、「● ●」との場合より音の間隔を短く感じることはありません。なぜ音のリズムを逆転させるだけで時間縮小錯覚が起きないのかは不思議なことです。
 この時間縮小錯覚は、私たちが普段話をするときや、楽器を演奏するときに、無意識にその効果を使っている可能性があります。例えば、音楽のある1小節だけを取り出して聞いたときと、前後のつながりを含めて聞いたときでは、異なるように聞こえた経験はありませんか? 前後にどのような音が鳴るかで、聞こえ方が変わってくるのです。もしかすると、この効果をうまく使うことが音楽の「グルーヴ」や「ノリ」を生んでいるのかもしれません。

アイコン

講義を視聴する(1分)

アイコン

講義を視聴する(1分 その2)

アイコン

講義を視聴する(1分 その3)

アイコン

講義を視聴する(30分)

この学問が向いているかも 実験心理学、知覚心理学、聴覚心理学

九州大学
芸術工学部 音響設計学科 教授
中島 祥好 先生

先生の著書
メッセージ

 九州大学芸術工学部は、日本で最初に設置された芸術工学部です。文系や理系、芸術系というような分野の垣根を取り払い、工業技術と人間の生活との関わり合いを、よりよいものにすることをめざしています。
 人間の知識と感性とを組み合わせることで、生活をより豊かに、世の中の仕組みをよりよいものにすることができるのです。音響設計学科では、音が生活の中で果たす役割や利用法について研究しています。言語、聴覚、音楽、音、DTM(パソコンでの音楽制作)などに興味のあるあなたには、面白い研究テーマがたくさんあると思います。

先生の学問へのきっかけ

 大学では心理学の分野に進みたかったので、研究が進んでいて、あこがれの先輩をたくさん輩出している、東京大学文学部を選びました。心理学の中でも「聴覚心理学」の研究をするようになったきっかけは、音楽を演奏したり、詩などの文学作品を朗読したりする際に、音の出るタイミングが少し違うだけで、全体の印象がガラッと変化することに気づいたからです。「なぜ人間はそのように感ずるのだろう?」「仕組みはどうなっているのだろう?」と興味を持ち、人間が音を聴いた時の感じかたをさまざまな方法で研究しています。

大学アイコン
中島 祥好 先生がいらっしゃる
九州大学に関心を持ったら

 九州大学は、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えていきます。さらに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。

TOPへもどる