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講義No.06233

条文から広がる法学の幅広く奥深い世界を見てみよう

短い条文なら解釈は簡単?

 刑法199条は「人を殺した者は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役に処する」というとても短い条文です。それなら誰が読んでも同じ意味に受け取れると思うかもしれませんが、実はそう単純ではありません。

人間が「人」として保護されるのはいつ?

 ここでいう、「人」は何を意味するでしょうか? 「人」は、「出生」から「死亡」までの段階を指します。出生前のヒト生命体は「胎児」、死亡後は「死体」です。「人」の生命に対する罪としては、殺人罪、傷害致死罪、遺棄致死罪、過失致死罪などたくさんありますが、「胎児」に対しては、堕胎罪のみ、「死体」に対しては、死体遺棄罪や死体損壊罪などで軽く処罰されるだけです。つまり、法的に最も強く保護されるのは、「人」だということができます。
 そうすると、「人」であるかどうかがとても重要ですが、どの時点で「出生」と認めるかそもそも争いがあります。刑法の世界で広く支持されている考え方は、「母体外に赤ちゃんの体の一部が現れた時点」から「人」として保護しようというものです。このときから、赤ちゃんは母体を介さずに直接攻撃を受ける可能性が出てくるためです。しかし、医療が発達した現代では、胎児を取り出して手術をし、また母体に戻すという治療方法も可能です。この場合、上の考え方によれば、赤ちゃんは、いったん「人」になってまた「胎児」に戻るのでしょうか? 刑法でこれまで支配的だった見解は、医療の発展によって見直しが迫られているのです。

答えは1つではない

 「死亡」の時期については、皆さんも知っているとおり、「脳死」を人の死と認めるかどうかという問題があります。刑法199条の意味を探っていくと、結局、「生命」とは何かという永遠のテーマに行き着きます。短い条文の中にも、法の世界が広がっているのです。
 法の解釈は、時代と共に移り変わり、ほかの学問領域の発展にも影響を受けます。最高裁の判例も、通説と呼ばれている学説も、常に絶対的に正しいとは言えません。答えは1つではないのです。

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九州大学
法学部  教授
井上 宜裕 先生

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メッセージ

 九州大学法学部の私のゼミでは、事例問題を素材に、法律の知識を駆使しつつ、さまざまな角度から徹底的に議論を行います。これは学生が自ら考え、問題を解決するための実践力を養うためです。
 あなたが「何か変だ」と感じたことには、きっと何らかの理由があります。だから、疑問に思ったことを放っておかずに、自分で考える習慣を身につけてください。すぐに納得のいく答えが見つからなくても、徹底的に調べてみましょう。そうすれば、今までにない発見がそこにあるはずです。

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