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講義No.06150

たった1個の電子を自由に操る究極の情報処理デバイス 

増え続ける電力消費は社会の危機

 パソコンやスマートフォン、家電製品、自動車など身近なものに使われる「LSI(大規模集積回路)」は、より小型でたくさんの情報が処理できるように進歩しています。しかし従来の方法では、もはや限界かもしれません。なぜなら、小型化した割には使用する電圧が下がらないので、大規模化が進むにつれ必要な電力量がうなぎのぼりに増えているからです。例えば、インターネットで情報処理を行うデータ・センターのコストの6割は電気代といわれています。電力消費を抑えることは未来の社会にとって、大きな課題なのです。

電子1個のレベルで情報を処理

 従来のLSIは、例えば1bit(bit:コンピュータが扱う最小の情報単位)を表すために、1万~10万個の電子を操作するので多くの電力が必要でした。それならば、たった1個の電子で情報を処理できるようにして大幅に電力消費を減らそうと、ナノデバイス(ナノサイズの情報処理装置)の研究が行われています。この装置は、電子が蓄えられている場所からいくつかのゲートを通り抜けてメモリ箱の中に入る過程で情報処理を行います。ゲートの間隔は電子1個の動きを操れるように、少なくとも髪の毛の50分の1(およそ100ナノメートル)より小さくしています。例えば、電子を1個ずつメモリに出し入れしたり、2個、4個と個数を決めて動かしたりした結果を別の「トランジスタ」で読み出すことによって、計算を行います。

物理と化学の融合「電子物質科学」

 究極の情報処理装置ともいえるこのナノデバイスには、材料のシリコンをナノサイズに正確に加工する技術や情報処理の精度をいかに上げるかという課題が残されていますが、実現すれば、大きな省エネ効果を生み出すことでしょう。
 このような最先端エレクトロニクスの研究は、電子を扱う物理と材料を扱う化学、どちらか一方の知識では進めることが難しくなってきています。両方の知識を融合させる「電子物質科学」の分野で、新しい技術をつくる時代に来ているのです。

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この学問が向いているかも 電子物質科学、電気・電子工学、材料工学

静岡大学
工学部 電子物質科学科 教授
猪川 洋 先生

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メッセージ

 私は子どものころからラジオやオーディオ機器をつくることが好きで、大学では電子工学科に進みましたが、「イオンを使った薄膜形成」という材料工学に近い研究をしていました。卒業後は企業でシリコンのLSI(大規模集積回路)に使う電子デバイスの研究開発を行い、今は大学でナノデバイスの研究をしています。これらの経験から、新しい学問や技術分野を切りひらくために大切なのは「自分の好きなことを見つけること」「専門分野以外にも広く興味を持ち知識の融合を図ること」だと感じています。あなたのチャレンジに期待しています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

東京大学大学院→旭硝子(株)、(株)デンソー、本田技研工業(株)、ヤマハ発動機(株)、浜松ホトニクス(株)、シンフォニアテクノロジー㈱、日本車輌製造(株)、オムロン(株)、日本特殊陶業㈱、(株)豊田自動織機など

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