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福岡大学の教員によるミニ講義

関心ワード
  • システム、
  • 遺伝子、
  • 分子、
  • 人間(人・ヒト・人類)、
  • 細胞、
  • イオンチャネル、
  • 細胞膜、
  • タンパク質、
  • 信号

イオンチャネルで人間の体の働きを理解する

遺伝子や分子だけでは、人間の体は理解できない

 最近の目覚ましい生命科学の革新によって、人間の体の機能を遺伝子や分子といった微細なレベルで見ることが可能になりました。科学者は生体の仕組みが解明されることを期待しましたが、研究を進めていくうちに、それほど簡単ではないことがわかってきました。例えば、当初はあるタンパク質の機能は1つの遺伝子がコントロールしていると考えられていましたが、実際にはもっと複雑で、しかも遺伝子以外の要素も絡みあっていたのです。また、いくら分析的に細かく見ても、部分を見ただけでは最終的になぜその機能があるのかを理解できず、研究は壁にぶつかりました。

部分ではなく全体として人間の体を見る

 そこで改めて人間の体を全体として見ることが求められるようになりました。しかし、いくら部分を集めて研究しても全体にはならないので、全体を統合する研究が必要です。その足がかりとして、人間を微細な分子のレベルからタンパク質のレベル、さらに細胞、臓器や組織、個体が集まった集団へと、多階層的にわたって構成された「システム」として見る必要性が出てきたのです。生体という複雑なシステムを忠実に再現するのは容易ではありませんが、コンピュータ技術の急速な進歩によってその可能性が見えてきたのです。

体の機能を統合するイオンチャネル

 人間の体は、脳の命令や感覚などのさまざまな情報を、イオンチャネルを介して電気的な信号に変え伝えています。それが最終的には細胞機能の変化を引き起こします。イオンチャネルは、例えば心臓の打つリズムや脳の活動に関与していて、これに異常がおこると不整脈、てんかんといった病気になります。イオンチャネルはナトリウムイオンやカルシウムイオンなどを通す細胞膜の通路ですが、細胞内外の環境の変化に応じた精緻な制御を受けています。そして細胞機能の調節だけでなく、細胞とより高次のレベルをつなぐ役割があります。その働きを解明していけば、人間の体全体の働きを理解できる可能性があるのです。

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この学問が向いているかも 医学


医学部 医学科 生理学 教授
井上 隆司

メッセージ

 多感な高校時代に見たり聞いたり考えたりしたことは、後の人生に大きな影響を与えます。特に、音楽や絵画などの芸術を楽しみ、本を読んでさまざまな知識、思想や経験に触れることは、物事の本質を全体として見る統合能力を育てます。あなたにもぜひ、そのような経験をしてほしいと思います。実は私が研究している生理学は、人間を統合的な存在として捉え、その素晴らしい思考力や創造力がいかにして生み出され発揮されているのかを解明する学問分野です。この分野に参加して、共に学ぶ喜びをあなたにも知ってもらいたいと願っています。

先生の学問へのきっかけ

 最初は循環器系の小児科医を志していました。しかし、その当時の医学では、命に関わるような難病の患者さんに対しては殆ど何もできないという無力感が、生理学や薬理学の基礎研究の道に進んだ動機でした。研究者には、膨大な可能性の中から重要な原則を見出す忍耐力や、全体を統合的に理解する直感力が必要です。科学が進歩し、遺伝子や分子レベルで人間の体を見ることができるようになりましたが、学問の極端な細分化が進んだ結果、却って全体をとらえることが難しくなりました。今、これをどのように再統合していくかが問われています。

先輩たちはどんな仕事に携わっているの?

学術機関研究員/製薬会社研究員/医師/歯科医師

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